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乳児保育で「先生、抱っこしていい?」と聞く子がいたら|研修講師が伝えた3つのこと

1 日前
読了時間: 12分

まずは解説動画をご覧ください(約20分)


▲ 乳児保育の研修で、受講された先生方が打ち明けた悩みと、それに講師のゴンさんがどう答えたかをお話ししています。


「先生、抱っこしていい?」

子どもからこう言われたら、皆さんはどう思われるでしょうか。

これは、ある保育園で本当にあった場面です。夕方のお帰りの時間、0歳・1歳・2歳の子が一緒に過ごす合同保育の時間に、3人の子が同時に泣き出してしまいました。先生は、お迎えの早い子から順番に抱っこしていきました。

それを何日か続けていたら、ある子が、抱っこしてほしいときに先生に許可を取るようになってしまったそうです。

順番を待てるようになった、という話ではありません。この子は、遠慮することを覚えてしまったのです。

この記事では、2026年 9月に私どもが開いた保育士等キャリアアップ研修(乳児保育)で、受講された先生方が打ち明けてくださった現場の悩みと、講師の答えをご紹介します。




現場でよく聞く、4つの場面

どれか1つでも「うちにもあるな」と思われたら、この先も読んでいただく値打ちがあると思います。


場面

現場の声

時間に追われる

職員会議が3時半から始まるので、今日はいつもより少し早めに寝かしつけてしまう。園庭がないので散歩に出るが、全員そろって帰らなければならず、「まだ遊びたい」という子を言葉で説得して連れて帰る。お昼ご飯は喫食時間(食事に使ってよい時間)が決まっていて、眠たい子やゆっくりの子に合わせてあげられない

抱っこ

夕方のお迎えラッシュ。足元にべったりくっついている子がいるが、連絡帳を書きながら、保護者にその日の様子を伝えながらなので、出せるのは片手だけ。「抱っこして」と言える子にはすぐ応えられるが、言えない子、表現が上手ではない子には、どのタイミングで声をかければいいのか分からない

噛みつき

「噛みつきは絶対に起こさないように止めてください」と言われている。だから、おもちゃの取り合いが始まった瞬間に体で割って入って止める。すると子どもはもっと大きな声で泣く。1人噛みつく子が出ると次々に連鎖して、保育室全体がピリピリし、先生のほうが保育を楽しめなくなる

職員同士

ズボンを自分ではこうとしている子に、ある先生は最後まで見守り、別の先生は片足だけそっと手伝う。すると子どもは手伝ってくれる先生のほうへ行くようになり、見守っていた先生が「できるんだから、やらせたほうがいいのでは」と言われる。ベテランの先生に「これが正解」と言い切られ、自分の気持ちを伝えるところまで行けない。保育観について話し合いたいが、会議は行事の確認と日々の報告でいっぱい


どれも、特別な園で起きている特別な話ではありません。むしろ、真面目に保育をしている園ほど起きます。

なぜかというと、どれも「子どものため」と「園を回すため」、この2つがぶつかっている場面だからです。悪い人は1人も出てきません。


これは、受講された先生方ご自身の言葉です

4つの場面はすべて、2026年 9月に開いた保育士等キャリアアップ研修 乳児保育のコースで、受講された先生方ご自身が口にされたものです。


研修の概要


コース

保育士等キャリアアップ研修 乳児保育

受講

19名

時間

朝から夕方まで、およそ6時間

進め方

グループに分かれて話し合う時間を何度も設けた


そのグループでの話し合いで出てきた悩みが、この4つでした。私が考えた例ではありません。現場の先生方の生の言葉です。




講師のゴンさんの答えは、3つ

この悩みに、講師の栁澤和夫先生(ゴンさん)がどうお答えになったのか。3つに絞ってご紹介します。



ゴンさんの答え

1

気が済むまで抱っこ

2

噛みつきは「止める」のではなく「守る」

3

「すり合わせ」ではなく「調和」




1 気が済むまで抱っこ

「気が済むまで抱っこ」は、ゴンさんご自身が提唱されている言葉です。対になるのが「ながら抱っこ」。連絡帳を書きながら、別の子に声をかけながら、片手で抱く。あれのことです。

ここが大事なところです。ながら抱っこでは、子どもは満足しません。

少し想像してみてください。誰かに大事な相談をしているときに、相手がスマートフォンを見ながら「うん、うん」と返事をしていたら、どうでしょうか。話は聞いてもらえている。でも、なんだか満たされません。だから、もう一度言いたくなります。

子どもも同じです。満たされていないから、何度も抱っこを求めてくる。それを見て、大人は「この子は抱き癖がついちゃったな」と言ってしまう。

順番が逆なのです。満たしていないから、何度も求めてくるのです。


抱っこは、10秒程度

では、どのくらい抱けばいいのか。ゴンさんによれば、愛着関係ができている先生がしっかり向き合って抱けば、子どもが満足するまでにかかる時間は10秒程度だそうです。

10分でも30分でもありません。その代わり、前提があります。愛着関係ができていることです。日ごろから信頼のある先生の抱っこだから、10秒で足りるわけです。

逆に言えば、望まれていない抱っこを続けてしまうと、愛着どころか子どもに避けられるようになってしまう、ともおっしゃっていました。


「育む」は、羽で包むこと

では、なぜ抱っこが必要なのか。ゴンさんは、言葉の成り立ちから説明されていました。

「育む(はぐくむ)」という言葉は、もとは「羽(は)で包む(くくむ)」。親鳥がひなを自分の羽でそっと包み込む姿から来ている、というお話です。

つまり、育てるということのいちばん元の形が、包むことです。だから、抱っこは保育の土台である、とゴンさんはおっしゃっています。


必ず、保育所保育指針に戻る

そして、ここがゴンさんの研修の大きな特徴です。お話は必ず、保育所保育指針に立ち返ります。

保育所保育指針 第1章 総則「2 養護に関する基本的事項」の「イ 情緒の安定」、ねらいの③です。


一人一人の子どもが、周囲から主体として受け止められ、主体として育ち、自分を肯定する気持ちが育まれていくようにする。

ゴンさんは、この一文を読んだあとに、こう問いかけられました。


主体として受け止められ続けなければ、主体として育つことはできませんよね?

1回受け止めたら終わりではない。毎日の、その積み重ねなのだ、と。そして、その積み重ねのご褒美が自己肯定感なんです、とまとめられました。




2 噛みつきは「止める」のではなく「守る」

ここは、この研修の中で受講された先生方がいちばん驚かれていたところでした。ゴンさんは、まずこう尋ねられます。


同じ子が、同じ子に噛まれること、多くありませんか?

この問いかけに、多くの先生が手を挙げられました。心当たりがある、ということです。

では、噛む子のほうに原因があるのか、噛まれる子のほうに原因があるのか。研修では「噛まれる子のほう」という答えが圧倒的でした。

どういうことか。噛まれる子は、相手の遊びが面白そうだから近づいていくのです。遊んでいる子からすると、邪魔されたと感じる。だから「来るな」という意味で噛む。

ここを、ゴンさんはこう言い切られました。


一人遊びしかしていなかった子が、噛まれるかもしれないと分かっていながら、それでも一緒に遊びたくて近づいていく。これは、その子の成長でしょ?

そして、「乳児が立とうとしているときに、『今日は歩くのをやめておきましょうね』という先生はいませんよね」とも付け加えられました。


「止める」と「守る」のちがい

では、どうするか。ゴンさんは「止めるのではなく、守りなさい」とおっしゃっています。



すること

噛む子の気持ちを

止める

噛みに来た子の手や口を押さえる

否定する

守る

噛まれそうな子の体を自分の手で覆い、噛まれないようにする

否定しない


どちらも体を動かしています。何もしない、という話ではありません。違いは、気持ちのほうです。

「養護」という言葉は、「養って護る」と書きますよね。


ゴンさんご自身の断り書き

ここで1つ、大事なことを申し添えます。ゴンさんご自身が研修の中で、「これは私のたまたまの実践例ですので、皆様にこれをしなさいというつもりはありません」と、はっきり断っていらっしゃいました。

私もそのとおりだと思います。園には園の方針がありますし、保護者の方へのご説明もあります。ですから、これは正解としてではなく、こういう考え方もある、という1つの材料として受け取っていただければと思います。




3 「すり合わせ」ではなく「調和」

3つ目は、職員同士のお話です。ゴンさんは、ここをこう切り出されました。


価値観が違うということは、良くないことではないんですよ。価値があることなんです。

年代も経験も違う先生がそろっている園は、それだけ学びの多い園だ。対人関係でぶつかることが多い園ほど、対人関係について学べる園だ、ともおっしゃっていました。


ほうれん草の油炒めが出た日

ゴンさんが出された例が、とても分かりやすかったのでご紹介します。

ベテランのA先生のテーブルでは、苦手な子にも「食べたら元気になるかもよ」と上手に声をかけて、A君もB君も食べることができました。先生はほめます。ところが、C君だけはどうしても口を一文字に結んで食べられません。先生は、ついがっかりした顔をしてしまいます。

その隣で、新人のB先生は「食べられないのね。じゃあ残しましょ」と言って、テーブルは全部残食です。

さて、A君とB君は、隣のテーブルを見ながら何を思うでしょうか。研修では、こんな答えが出ました。「あっちの先生に食べさせてもらいたいな」「あっちのテーブルに行きたいな」。

このあと2人の先生は、クラス会議で話し合って、やり方をすり合わせます。翌日、新人のB先生がベテランの先生のやり方で食べさせにかかる。すると、子どもは泣き出してしまいました。


すり合わせは、とがった部分を削ること

ゴンさんは、ここでこうおっしゃいました。


すり合わせというのは、お互いのとがった部分を削って合わせることです。削られたほうは、自分のない保育になってしまう。そうではなくて、調和を目指しましょう。

調和とは、「あなたの出っ張ったところを、私のへこんだところで受け止める。その代わり、私のへこんだところを、あなたの出っ張りで補ってください」という関係のことです。

実はこれ、もうやっておられますよね。力のいる仕事を男性の先生にお願いしたり、英語の話せる先生に通訳をお願いしたり。あれが調和です。

一言で言えば、調和とは、人を変えようとしないこと。子どもを変えようとしないこと、保護者を変えようとしないこと、そして仲間を変えようとしないことです。




3つに共通する土台|保育所保育指針を根拠にする

ここまで3つご紹介しましたが、この3つには共通の土台があります。保育所保育指針を根拠にする、ということです。

ゴンさんは、指針の文末に注目されます。


文末

重さ

「しなければならない」

必ず守らなければいけない遵守事項

「することが必要である」

努力義務

「すること」「〜する」とだけ書いてある

園の判断に任されている裁量事項


道路標識にたとえると分かりやすいかもしれません。「止まれ」は必ず止まらなければいけません。「徐行」は状況を見て判断します。同じ標識でも、重さが違いますよね。指針も同じで、文末で重さが変わるのです。

これが分かると、職員同士の話し合いが変わります。「あなたの考えの根拠は何ですか」と聞かれたときに、「指針のここに、こう書いてあります」と答えられる。そうなって初めて、話し合いの質が上がっていきます。




受講された先生方の声

受講された先生方は、この日、何を受け取られたのでしょうか。お書きいただいたレポートの中から、掲載のご承諾をいただいた方の言葉をご紹介します。


抱っこをすることは良くないと思っていましたが、一対一での時間をしっかり取ることで愛着関係を築くことができると学びました。
保育者目線だと一対複数に見えるが、子どもはいつでも一対一に見えている。この話を聞くまで気づきも考えもしませんでした。
忙しいから、人手不足だからと言い訳をして、満足するまで抱っこしてあげられておらず、とても耳が痛かったです。
保育観の違いから職員同士の揉め事がよくあります。板挟み状態で悩ましい日々を送っていますが、そういう時こそ保育指針を根拠に話し合いたい。

そして、私がいちばん心に残ったのは、この言葉です。


意見の違いを言い合うことが必要だと思っていましたが、そうではなくて相手を変えようとしない。「戦わなくていいんだ」と、とても心が軽くなりました。

戦わなくていい。この一文に、この研修の値打ちが全部入っていると思いました。

講義全体の満足度は、次のとおりでした(ご回答19名)。


講義全体の満足度

人数

非常に満足している

14名

やや満足している

5名

どちらともいえない・満足していない

0名




この学びを、園全体のものに|園内研修オンデマンドパック

ここからは、この学びを皆様の園でどのようにお使いいただけるか、というご案内です。




◆園内研修オンデマンドパック◆

動画で学んで、保育で試し、園で語り合う。 これがこの商品の中身です。

まず、はっきりさせておきたいことがあります。キャリアアップ研修と園内研修は、どちらが上ということはありません。役割が違います。



誰の学びか

保育士等キャリアアップ研修

先生ご自身の学び(国が定めた研修)

園内研修

園全体の学び


お料理にたとえると、料理教室に1人だけ通っても、ご家庭の味は変わりませんよね。家族みんなで同じ作り方を見て、それぞれ作ってみて、「ここが難しかった」「ここはおいしくできた」と言い合う。それで、その家の味になります。

園も同じです。1人が学んで帰ってきても、園はなかなか変わりません。両方あって初めて、園が動き出します。


進め方は3つだけ



すること

1

事前に、職員の皆様がそれぞれご都合のよい時間に、オンデマンド動画(今日ご紹介したゴンさんの研修)をご覧いただく

2

学んだことを、日々の保育で試していただく期間を置く

3

当日の園内研修で、やってみてどうだったかを持ち寄って語り合う


この真ん中の「試してみる期間」が大事です。動画を見てすぐその週に語り合うと、話す材料が感想で止まってしまいます。やってみてどうだったか。これを持ち寄るから、園の中に共通の認識、共通の理解、そして共通の言葉が生まれてきます。


導入された園からのご報告

実際にご導入いただいた園の園長先生から、第1回の園内研修のおよそ2か月後に、こんなご報告をいただきました。


ながら抱っこを、ほぼ見ることがなくなった。子どもと関わる時間が大きく増えた。

これは、研修を1回やったから変わった、という話ではありません。動画で学んで、保育で試して、園で語り合う。これを一周していただいたから、職員の皆様の中に共通の言葉が生まれたのだと思います。


1回から承ります

園内研修オンデマンドパックは、1回から承っております。何回やらなければいけない、という決まりはありません。まずは、園の今のご様子をお聞かせください。費用のご案内も、その際にあわせてお伝えいたします。





お問い合わせ


特定非営利活動法人 すずらんチャイルドケア

人財育成部 部長 太田 宏彰


〒250-0862 神奈川県小田原市成田475-17 ゼフィールU201

TEL 0465-87-7649




ご質問はホームページのお問い合わせフォーム、または動画のコメント欄からもお受けしています。

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