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待機児童が9年ぶりに増えました|でも増えたのは実質的に東京だけです

  • 20 時間前
  • 読了時間: 13分

まずは解説動画をご覧ください(約22分)


▲ 待機児童2,435人の中身と、資料の後半に書かれている「もう一つの話」


2026年8月28日、こんなニュースをご覧になった方は多いと思います。

待機児童が9年ぶりに増えた。

そのニュースを見て、こう思われたかもしれません。

うちの園は、むしろ子どもが減っているのに。

もしそう感じられたのであれば、その感覚は正しいです。

何を言っているのか分からないですよね。待機児童は増えた。でも、うちの園は減っている。この2つは両立します。

今日いちばんお伝えしたいのは、ここです。

待機児童は確かに増えました。ただし、増えたのは実質的に東京だけです。

そして——この資料の本当の中身は、待機児童の話ではありません。 後半の20ページに、まったく別の話が書かれています。定員が埋まらないという話です。

今日は3つに絞ってお話しします。

  1. なぜ東京だけが増えたのか

  2. 定員充足率という数字が何を意味しているのか

  3. そこから公定価格と補助金がどう動こうとしているのか




今日扱う資料について

こども家庭庁が2026年8月28日、つまり昨日公表した**「保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)」**という資料です。

取りまとめというのは、全国すべての市区町村から4月1日時点の保育の状況を報告してもらって、国が一冊にまとめたものです。

最初に1つお断りしておきます。この資料には、先日7月28日にあった熊本地震の影響で、熊本県内の自治体のデータが確定していないという注意書きがあります。ですので、今日お話しする数字はすべて暫定値です。今後修正される可能性があることはご了承ください。




押さえるべき4つの数字

項目

令和8年4月1日

前年比

利用定員

3,106,417人

12,865人の減

利用児童数

2,646,756人

31,661人の減

待機児童数

2,435人

181人の増

定員充足率

87.7%

0.7ポイントの低下


ここで1つ、気づいていただきたいことがあります。

4つのうち、増えているのは待機児童だけです。あとは全部マイナス。

定員が3,106,417人で、実際に通っているのが2,646,756人。引き算をすると——

全国の保育の器には、459,661人分の空席があるということになります。

空席が46万人近くあるのに、入れない子が2,435人いる。 これはどういうことなのか。ここから見ていきます。




なぜ東京だけが増えたのか

都道府県別の待機児童数を見ます。

東京都が1,113人。 前の年は339人でしたから、3倍を超えています。 増加数で言うと774人の増です。

思い出してください。全国の増加は181人でしたよね。

東京だけで774人増えているのに、全国では181人しか増えていない。 つまり東京以外の都道府県では、合計で600人近く減っているということになります。

全国2,435人のうち東京都が1,113人。全国の待機児童のおよそ2分の1が東京都にいる計算です。

市区町村別の上位10自治体を見ても、7つが東京都内です。


自治体

待機児童数

世田谷区

166人

足立区

160人

北区

130人

町田市

90人

兵庫県西宮市

75人

江戸川区

75人

奈良県橿原市

56人

兵庫県明石市

54人

大田区

48人

立川市

45人




きっかけは保育料の第一子無償化です

では、なぜ東京だけなのか。順を追ってお話しします。

きっかけは、東京都が2025年9月から始めた保育料の第一子無償化です。0歳から2歳の保育料を、所得制限なしで無償にしました。

これで何が起きたか。

これまでは「保育料を払ってまで預けるかどうか」と迷っていたご家庭にとって、迷う理由が1つ消えました。

すると、預けようと考えるご家庭が増えますよね。しかもいちばん早い時期から。つまり0歳から預けようという判断が増えます。

その証拠が、この資料の中にはっきり書いてあります。

申込者を年齢別に見ると、1・2歳児は減っています。3歳以上も減っています。ところが0歳児だけが145,164人で、3,184人増えているんですね。

全体の申込者数は2,729,681人で、35,554人も減っています。 その中で0歳児だけが増えている。

これは、少子化とは別の力が働いたと考えるのが自然です。




家賃高騰という、もう一つの事情

こども家庭庁は、東京都内の自治体へのヒアリングで、他にも2つの事情を挙げています。資料にはこう書かれていました。

充実した子育て支援策等により、都外への転出が抑制されている可能性も考えられる
特に都心部での地価・家賃の高騰等により、子育て世帯の転入増加が影響していると考えられる

噛み砕くとこうです。都心の家賃が上がったので、子育て世帯が周辺の区や多摩地区に移ってきた。

その移った先で、申し込みが集中した。世田谷区、足立区、北区、町田市、立川市。この並びを見ると、確かにそういう動きに見えますね。

ただし、これはこども家庭庁が自治体から聞き取った内容であって、統計的に因果関係が証明されたものではありません。 そこは押さえておいてください。




大きく減らした自治体もあります|減った理由が重要です

増えた話ばかりでしたが、大きく減らした自治体もあります。

  • 滋賀県大津市 …… 110人の減少(前年132人 → 31人)

  • 沖縄県北谷町 …… 42人減って0人に

  • 滋賀県草津市 …… 38人の減少

こども家庭庁が、減った自治体にアンケートを取っています。

いちばん多かった答えは受け皿の拡大でした。新しく園を作った、または増築した。定員や受入児童数を増やした。86%の自治体が手を挙げています。

次に多かったのが**「申込者数が見込みを下回った」で32.9%。**

そしてその理由をさらに聞くと、**88.4%の自治体が「就学前人口が想定以上に減少した」**と答えています。

ここが大事なところです。

待機児童が減った理由の多くは、園を増やしたからではなく、子どもが思ったより減ったからなんですね。




報道であまり触れられていない数字

もう1つ、報道であまり触れられていない数字をご紹介します。

全国1,741の市区町村のうち、待機児童がゼロの自治体が1,552。割合にして89.1%です。

10の自治体があれば、そのうち9つは待機児童ゼロということになります。

待機児童がいるのは189自治体で、前の年より20減っています。

総数は増えたけれども、待機児童を抱えている自治体数はむしろ減っているんです。




待機児童の96%は3歳未満児です

年齢を見ると、待機児童の96%が3歳未満児です。


年齢

人数

割合

1・2歳児

2,117人

86.9%

0歳児

220人

3歳以上児

98人


では、なぜ1・2歳児に集中するのか。

3歳以上には幼稚園や認定こども園という受け皿がありますが、0〜2歳はほぼ保育所か地域型保育しかありません。

しかも0歳より1歳のほうが、育休明けで申し込みが一気に増えます。 だから1・2歳のところがいちばん詰まるわけです。




「うちは落ちたのに数えられていない」|除外4類型

ここで、保護者の方からよく聞かれる質問に触れておきます。

うちは落ちたのに、待機児童に数えられていないのはなぜですか?

待機児童の数え方には除外4類型というルールがあります。申し込みはしているけれども、待機児童には数えない4つのパターンという意味です。

  1. 特定の園だけを希望している方

  2. 育児休業中の方

  3. 求職活動を休止している方

  4. 自治体独自の保育施設を利用している方

この4つを合わせると61,448人います。待機児童2,435人のおよそ25倍です。

この数え方が適切かどうかは、長く議論のあるところです。今日はそこには踏み込みません。ただ、待機児童2,435人という数字は、申し込みをして入れなかった方の全体像ではないということだけは押さえておいてください。




ここからが今日の本題です|資料の後半

この資料は全部で25ページあります。待機児童の話は、実はその前半だけです。

後半はまったく別の話に移ります。定員が埋まらないという話です。

定員充足率という言葉が出てきます。利用定員に対して、実際に何人通っているかの割合です。定員100人の園に87人通っていれば、充足率は87%。

その全国平均が87.7%。

ここからが問題なんですね。




都市部90.9%、過疎地域72.7%

地域によって、まったく違う景色が広がっています。


区分

定員充足率

対象

都市部

90.9%

首都圏・近畿圏の7都府県

+政令指定都市・中核市の334自治体

全国

87.7%

過疎地域

72.7%

過疎地域の持続的発展の支援に関する

特別措置法に基づく713市町村


定員100人の園でイメージしてください。都市部では91人が通っていて、過疎地域では73人が通っている。

教室も遊具も職員体制も100人分揃えてあるのに、27人分が空いたまま。 それが過疎地域の平均像ということです。




もっと深刻なのは、下がる速さです

この5年間の推移をご覧ください。

区分

令和3年

令和8年

5年間の変化

都市部

93.0%

90.9%

2.1ポイント低下

過疎地域

81.3%

72.7%

8.6ポイント低下

下がり方の速さが、およそ4倍違います。

充足率が下がると、園では何が起きるか。

公定価格は定員ではなく、実際に通っている子どもの数で入ってきます。

定員90人で運営費の計画を立てているのに、実際は65人しか入ってこない。職員は定員に合わせて配置していますから、収入だけが落ちていきます。 これが続くと、単独では立ち行かなくなる園が出てきます。

都道府県別に見ると、長野県が74.0%、高知県が75.8%、鳥取県が77.3%。 これらの県は、すでに過疎地域の平均に近いところまで来ています。




園の数は増えているのに、中身が入れ替わっています

ここで1つ、面白い数字をご覧ください。

保育所等の数は40,046か所。前年より71か所増えています。

「あれ、園は増えているのか」と思われますよね。ところが、内訳を見ると景色が変わります。


施設種別

箇所数

前年比

保育所

22,967か所

291か所の減

幼保連携型認定こども園

7,737か所

268か所の増

幼稚園型認定こども園等

1,861か所

136か所の増

地域型保育事業所

7,481か所

42か所の減


つまり園全体の数は増えているように見えて、実際に起きているのは、保育所と小規模保育が減って認定こども園が増えているという入れ替わりなんです。

町のお店の総数は変わらないけれど、業態が入れ替わっている。 そういう動きだとお考えください。




自治体はどう動いているか

こども家庭庁が、全国1,741の市区町村に**「人口減少を見据えた対応を検討しているか」**と尋ねた結果です。

「人口は減少する見込みだが、検討していない」と答えた自治体が29.9%。 前年の調査では37.7%でしたから改善はしています。それでも、まだ3割近くが手をつけていません。

では、検討している自治体は何をしようとしているのか。


内容

すでに着手

検討段階まで含む

統廃合

27.2%

29.5%

利用定員の縮小

20.6%

23.1%

こども誰でも通園制度の実施

9.2%

22.5%


統廃合と定員の縮小。この2つが今、自治体の側でもっとも動いているテーマだと分かります。




ここが今日いちばん実務に効きます|実施計画

経営に直結する話をします。保育提供体制の確保のための実施計画というものです。

これは、市区町村が自分の地域の保育の将来像を書いて国に提出する計画です。国はこれを審査して、採択された市区町村に対してお金の面で優遇します。

令和8年度に採択されたのは392市区町村。

採択されるとどうなるか。

  • 施設整備の国庫補助率が2分の1から3分の2に上がります

  • 設置主体の要件が緩和されます

  • 保育士宿舎借り上げ支援事業の補助要件も緩和されます

ここが今日いちばん実務に効くところです。

園を建て替える、改修する、あるいは多機能化する。そのときの国の補助率が、自分の市区町村が採択されているかどうかで変わります。

採択の分類は3つ。待機児童対策・人口減少対策・地域の課題に応じた対策。 人口減少対策で採択されると、統廃合や多機能化のための整備費の補助率が上がる仕組みです。

自分の市区町村が採択されているかどうかは、こども家庭庁の見える化のページで公表されています。この記事を読み終えたら、ぜひご確認ください。




国はどちらを向いているか

全国の市区町村が出した実施計画を、こども家庭庁が集計した表があります。

令和7年から令和11年までの5年間で、申込者数はおよそ95,000人減る見込み。一方、利用定員はおよそ3,000人分増える計画になっています。

ニーズが95,000人減るのに、定員は3,000人増える。差はさらに広がります。

そして待機児童の欄をご覧ください。令和9年・令和10年・令和11年、すべて0人と書かれています。

これは「待機児童はもう出さない」という計画値です。

裏を返せば、国はもう「増やすフェーズ」にはいないということでもあります。

もちろん計画上の数字ですから、そのとおりになるとは限りません。ただ、国がどちらを向いているのかは、この表がいちばんはっきり示しています。




国が示している4つの対応

先ほど「充足率が下がると収入が落ちる」というお話をしました。国もそこは認識していて、資料には対応が書かれています。 4つご紹介します。


1つ目。公定価格の定員区分の見直し。 令和7年度から進んでいます。定員と実際の人数の開きを小さくするための見直しと書かれています。


2つ目。令和8年度からの特別地域保育体制確保対応加算。 ただし資料上は箇所書きです。正式な名称や要件については、令和8年度の公定価格の通知で別途ご確認ください。 この記事では「そういう方向が示されている」というところまでにとどめます。


3つ目。小規模保育の全国展開。 これまで国家戦略特区でしかできなかった3歳から5歳だけを対象とする小規模保育事業が、法律改正で令和8年4月から全国どこでもできるようになりました。

過疎地域で園児が10人まで減ってしまった。これまでは閉園しかなかったところに、「小さい規模で続ける」という選択肢が加わったということです。


4つ目。合併・譲渡のガイドライン。 保育所が合併したり、事業を譲渡したりするときの手続きのガイドラインが令和7年度に作られています。

国が合併と譲渡のガイドラインを作る。これは数年前には考えられなかったことです。




今日から園でできる3つのこと

今日のお話を自分の園に持ち帰るとしたら何をするか。3つに絞ります。


① 自分の市区町村が392に入っているか確認する

こども家庭庁の見える化のページに、市区町村ごとの実施計画が公表されています。入っ ていれば、整備や改修の補助率が上がります。


② 自園の定員充足率を、直近3年分出してみる

計算は簡単です。4月1日の在籍児童数を利用定員で割るだけ。

それを全国の87.7%と、自分の都道府県の数字で見比べてみてください。

ここで「うちは低いな」と感じられたら——それは園の努力不足ではないかもしれませ ん。地域そのものが動いているのかもしれません。

だからこそ、比べる相手を全国平均だけにしないでいただきたいんですね。


③ 市区町村の実施計画を実際に読んでみる

自分の地域が5年後に何人分の定員を見込んでいるのか。統廃合を検討しているのか。そこに自分の園がどう位置づけられているのか。

園長先生や理事の方が、いちばん早く知っておくべき情報です。




今日のまとめ

1つ。 待機児童は9年ぶりに増えたけれど、増えたのは実質的に東京だけ。全国の89.1%の自治体はゼロでした。


2つ。 資料の後半に書かれているのは定員充足率の話です。全国は87.7%、過疎地域は72.7%。5年間の下がり方は、過疎地域が都市部のおよそ4倍の速さでした。


3つ。 国はすでに**「増やす」から「支える・整える」へ舵を切っています。** 実施計画の採択、定員区分の見直し、小規模保育の全国展開、そして合併・譲渡のガイドライン。動き出しているのは、この方向です。

待機児童のニュースを見て「自分の園の話ではない」と感じられた方にこそ、この資料の後半を読んでいただきたいと思っています。

そこには、はっきりと皆さんの園の話が書かれています。




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〒250-0862 神奈川県小田原市成田475-17 ゼフィールU201

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