top of page

公定価格はこの先どうなるのか|令和8年度予算と実行計画から読む

  • 20 時間前
  • 読了時間: 14分

まずは解説動画をご覧ください(約25分)

▲ 令和8年度予算・こどもまんなか実行計画2026・公定価格の見直し事項から、この先を読む


人勧分の解説シリーズ、第5回・最終回です。

前回は8月7日に出された人事院勧告から、今年秋冬に出る人勧分がどのくらいのパーセンテージになるかを読み解きました。

今回はテーマを変えます。こども家庭庁はこの先どうしたいのか。 令和8年度の予算、こどもまんなか実行計画2026、そして4月に出た公定価格の見直し事項。この3つから読み解いていきます。



処遇改善等加算/人事院勧告分セミナー


処遇改善等加算 個別Zoom相談




ここまでの4本を振り返ります


内容

第1本

公定価格の人件費は国家公務員の給与で積算されている。保育士の格付けは福祉職俸給表(一)1級29号俸

第2本

8月の勧告資料の読み方。ニュースになる較差ではなく級別の改定率を見る

第3本

12年分のデータで検証。人勧分は上がりも下がりもする。配分がどこに置かれたかで決まる

第4本

今年の速報。1級が4.0%に下がり、保育の改定率は**3.8〜4%**と予測


ここまでは全部、今の話です。今日は時間軸を先に伸ばします。




「来年はもっと下がるのですか」というご質問

第4本を出したあと、こういう反応をいただくことが多いんですね。


今年4%なら、来年2027年はもっと下がるんですか?

これ、気になりますよね。並べてみると、たしかにそう見えます。


年度

公定価格の改定率

令和6年度

10.7%

令和7年度

5.3%

令和8年度

3.8〜4%(予測)


このまま下がり続けるのかな、と。

それを考えるには、国が何をしようとしているのかを見る必要があります。人事院ではなく、こども家庭庁の側を見るんです。

今日開くのは3つ。令和8年度の予算、こどもまんなか実行計画2026、公定価格の見直し事項です。



すべての親になっている1つの文書

まず、いちばん上流にある文書から行きましょう。

「保育政策の新たな方向性」。令和6年12月にこども家庭庁が出したものです。

この名前、ちょっと覚えておいてください。なぜかというと、公定価格の見直しは全部ここから来ているんです。

証拠をお見せします。今年4月に出た「令和8年度公定価格の基準等の見直し事項」という資料。その1ページ目の冒頭にこう書かれています。


人口減少に対応しながらこどもまんなか社会の実現を図るため……「保育政策の新たな方向性〜持続可能で質の高い保育を通じたこどもまんなか社会の実現へ〜」(令和6年12月 こども家庭庁)に基づき、必要な見直しを推進

「に基づき」と書いてありますね。つまりこの文書が、令和8年度の変更すべての親なんです。




目標の形が大事です|「他職種と遜色ない処遇」

ではその「新たな方向性」に何が書いてあるのか。ここが核心ですよね。

核心は、この一言です。


他職種と遜色ない処遇を実現する

ちょっとミニ解説を入れさせてください。この目標の「形」がとても大事なんです。

よくある目標は「何パーセント上げます」という形ですよね。3年で10%上げる、とか。でもこれは違います。「遜色ない」なんですね。つまり差を埋めるという形の目標なんです。

例え話をします。ゴールテープの位置が決まっていない競争を想像してください。「100m走る」ではなく「あの人に追いつく」というのが目標なんです。

ということはどうなるか。差が残っている限り、走り続ける理由があるわけですよね。

こども家庭庁の資料では、保育士の平均賃金はまだ全産業の平均には届いていないものの、処遇改善の取り組みによって着実に給与水準が上がっている状況が示されています。

差はまだあります。だから上げる動機もまだ残っているというわけなんです。




令和8年度予算の5.3%|新しい引き上げではありません

では具体的に、令和8年度の予算には何が書かれていたのでしょうか。さきほどの見直し事項の13ページを読みます。


保育士・幼稚園教諭等の公定価格上の人件費について、令和7年度補正予算で措置した5.3%の改善を引き続き確保する

5.3%。 これ、第4本でお話しした去年——つまり令和7年度の数字ですよね。

ここで気をつけていただきたいことがあります。こういう声を聞いたことはありませんか。


記事には2026年4月から5.3%引き上げって書いてあったけど、うちはまだもらっていないよ

これ、混乱するのが当然なんです。理由をご説明します。

同じ5.3%が、2つの年度名で登場するんですね。


登場

どこに

内容

1回目

令和7年度の補正予算で措置

令和7年4月に遡って適用

2回目

令和8年度の当初予算

「引き続き確保する」


同じ5.3%が令和7年と令和8年の両方に出てきます。ですから記事によって書き方が変わって、現場が混乱するわけなんですね。

はっきり申し上げます。令和8年度の5.3%は、新しい5.3%ではありません。 去年、令和7年度に措置した分の継続です。

では今年の人勧分4%前後(予測値)はどうなるのか。この上に乗ります。

第4本の階段の例えを思い出してください。5.3%の段を上がったところに、さらに4%の段が積まれるんです。足し算ではなく、積み上げ式なんですね。




見直し事項は人件費だけの資料ではありません

ここで30秒だけ寄り道をさせてください。

今日ご紹介している「令和8年度公定価格の基準等の見直し事項」、実はこれ、人件費の話だけではありません。


分野

内容

人材確保

人件費5.3%の継続/保育ICT推進加算(新設・30万円)/経営情報の未報告の減算

質の確保

満3歳以上限定の小規模保育事業の創設/定員21〜40名の調理体制の充実/安全計画の減算

支援

こども誰でも通園制度の加算の見直し/療育支援加算の見直し/保育士みなし特例


かなりの数が動いているんですね。

私がお伝えしたいのは1つだけです。人勧分だけ見ていると、他の変化を見落とします。 この資料は年に1回は開いてください。




こどもまんなか実行計画2026を3つに分解する


本題に戻ります。こどもまんなか実行計画2026、令和8年6月のものです。

ミニ解説をしますと、これはこども大綱に基づいて、政府が今年これをやりますと示す文書のことです。2026と言いましたが、2025年も2024年もありました。毎年作られるんですね。

その中の「こどもを支える大人たちへの支援」という項目に、こう書かれています。


民間給与動向等を踏まえた保育士・幼稚園教諭等の処遇改善を進めるとともに、保育所等の経営情報等の見える化・分析を継続し、公定価格の見直しや事業所の運営の支援等を検討する。あわせて、地域区分の見直しについて、必要な財源の確保にも留意しつつ、予算編成過程で検討する

一文がすごく長いですよね。3つに分解します。



① 民間給与動向等を踏まえた処遇改善を進める

ここ、大事ですね。**「民間給与動向等を踏まえた」**という言葉。第1本で何をお話ししましたでしょうか。

人事院は毎年、民間の給与を調べて、その差を埋めるように勧告する。まさにそれですよね。

つまりこの一文は、人勧分も今後も続けますと政府の計画に書いたということなんです。

今年は4%だったから来年はやらないかもしれない。そうではありません。やる前提で書かれています。 これが来年を考えるときの1つの材料です。



② 見える化・分析を継続し、公定価格の見直しを検討する

見える化を続けて、そのデータを見て公定価格を見直す。順番に注目してください。

まず園から情報を集める。それを分析する。その結果を見て単価を決める。ということは、園が出す情報が来年以降の単価を決める材料になるわけです。

この話は次の章でもっと具体的にやります。



③ 地域区分の見直しを予算編成過程で検討する

これを読むと「地域区分、変わるの?」と思われますよね。単価が根っこから動く話ですからね。




地域区分は令和8年度は動きません|2つの資料を突き合わせる

ここで、今回いちばん申し上げたいことをお話しします。

実行計画だけ読むと、誤解します。

公定価格の見直し事項の1ページ目に、注記でこう書かれているんですね。


令和6年人事院勧告を踏まえた地域区分の見直しは、令和8年4月からは実施せず、令和9年度に向けて引き続き検討

「実施せず」とはっきり書いてあります。

つまりこういうことです。


資料

書かれていること

こどもまんなか実行計画2026

検討する

公定価格の見直し事項

令和8年度はやらない


これ、両方読まないと正しく理解できないんですね。

ですので正確に申し上げます。地域区分は今年度は動きません。 動くとしても令和9年度以降です。




経営情報等の報告は義務です|未報告なら基本分単価の5%減算

では見える化の話に戻ります。ここは今年2026年7月から始まった、実務に直結する話です。

ミニ解説からいきましょう。子ども・子育て支援法第58条第2項。 ここで経営情報等の報告が義務になりました。義務です。任意ではありません。

提出の期限は、前事業年度が終わってから5ヶ月以内。 3月末で年度が終わる園なら、8月末までということになります。

そしてここからが本題です。報告していないと、減算されます。

令和8年度から「経営情報等の報告を行っていない場合」という減算が新しく作られました。適用は令和8年7月から。つまりもう始まっています。

中身を確認していきます。

項目

内容

減算額

基本分単価の5%

適用開始

令和8年7月

猶予①

報告期限から3ヶ月以上経過してまだ報告がない場合に適用

猶予②

報告に誤りがあって指摘を受けたのに、概ね1ヶ月以内に直さない場合も対象

経過措置

令和7年度の報告分が未報告で期限から3ヶ月以上経っている場合、令和8年7月の請求分から減算開始

ミニ解説を1つ。基本分単価というのは、公定価格の土台になる部分です。第1本でお話ししましたね。人件費・事業費・管理費を積み上げた、園の給付費の大部分がここです。

その5%が減算されます。

金額のイメージを申し上げます。ただし地域区分や定員、お子さんの年齢構成等で大きく変わりますので、あくまで一例としてお聞きください。たとえば90名くらいの園でしたら、年間で数百万円規模になります。

この5%減算で数百万円です。報告書を出さなかっただけで。

例え話をします。健康診断を受けないと保険料が上がる仕組み。そんな制度があったら、皆さん受けますよね。受けない理由がないですよね。経営情報報告もそれと同じ構造です。出せば減算されない。出さないと5%引かれる。




見える化の先に何が起きるか

ただ、私がお伝えしたいのは減算そのものよりも、その先です。因果の連鎖を辿っていきますよ。

見える化が進みます。そうすると園ごとの給与の状況が国に集まりますよね。そうすると国が分析しますよね。そうすると何が見えるようになると思いますか。

そう。人勧分を職員に配っていない園が見えるようになるんです。

第1本でお話しした通り、国はすでに人勧分の支給状況を調査して、未払い施設にフォローアップを行っています。そこにデータが加わります。

ですので、こういう場面が現実に起こり得ますよ。


去年の人勧分、どう配分されたか。記録を見せていただけますか?



請求システムの算出支援|自動化されるのは金額だけ

ここで明るい話も1つ入れましょう。

令和8年度から、請求システムによる算出支援が始まる予定です。加算額の計算をシステムが助けてくれます。

ただ、冷静に申し上げます。システムが計算してくれるのは「園にいくら入るか」です。誰にいくら、どうやって配るか。これは自動化されません。

考えてみてください。

  • ベテランに厚くするのか、若手に厚くするのか

  • 基本給を上げるのか、一時金で出すのか

  • 処遇改善等加算Ⅱ・Ⅲの対象者との整合をどうさせるのか

こういったところは、いわゆる経営判断なんですね。システムでは決められないところになります。

つまり、金額の計算は自動化されますが、配分の設計は園に残るんです。 ここを押さえておいてください。




来年を読むための5つの変数

では最後に、来年以降どうなるのか。申し訳ございませんが、数字の予想は出しません。 これは来年の勧告を見るまで誰にも分かりません。

その代わり、見るべき変数を5つお渡しします。この5つを毎年チェックすれば、ご自分で予測できるようになります。


変数

今年の状況

方向

① 民間の賃上げ

連合の最終集計で5.01%(月額16,400円)。前年5.25%を0.24ポイント下回るも3年連続5%超

プラス

② 人事院の配分方針(級別改定率)

中堅層以上に移った

マイナス

③ 国の政策意思(実行計画と予算)

「遜色のない処遇」は継続

プラス

④ 地域区分

令和9年度に向けて検討中。動けば単価が根っこから変わる

未定

⑤ 医療的ケア児への対応

見直し事項に「公定価格での対応を令和9年度に向けて検討」

未定


④と⑤にご注目ください。 これは人勧分とは別のルートで単価を動かす要因ですね。人勧分だけ見ていると見落とします。

そして来年どうなるかは、②がどちらに振れるかで決まります。 それは8月に分かります。




こども白書は「答え合わせ」です

1つだけ補足です。こども白書というのがありますが、令和8年版は6月19日に閣議決定されました。

これは毎年6月に出るもので、前の年度に何をやったかを総括する報告書なんですね。

ですので、これからどうなるのかを知りたいときは、こども白書ではなく、こどもまんなか実行計画と予算を見てください。 こども白書は、その答え合わせだと思っていただければと思います。




シリーズのまとめ|5点

1つ。 公定価格の人件費は国家公務員の給与で積算されています。保育士は福祉職俸給表(一)1級29号俸。だから8月の勧告は園のお金の源流です。


2つ。 ニュースになる較差ではなく級別改定率を見る。較差と保育の改定率は連動しません。


3つ。 人勧分は上がりも下がりもする。マイナスの年もありました。配分がどこに置かれたかで決まります。


4つ。 今年は中堅層以上に配分が移り、4%前後の見込み。でも率が下がっても金額は積み上がります。


5つ。 国は「他職種と遜色ない処遇」を目標に掲げているので、差がある限り上げる動機は残り続けます。




最後に|持ち帰っていただきたいのは知識ではなく習慣

このシリーズでいちばん持って帰っていただきたいのは、知識ではありません。習慣です。

毎年8月に、勧告資料の1級を見に行く。 「1級、何パーセント」という1行だけ。これで10分で終わります。

それだけで、園の準備が半年早くなります。

12月に単価が出てから慌てるのか、それとも8月から動き始めるのか。この差はとても大きいです。




人勧分 支給・配分セミナーのご案内

最終回なので、少し詳しくご案内させてください。

人事院勧告分の支給・配分セミナーをオンラインで開催しています。今日お話しした配分の設計、そこだけに絞って扱います。

中身を3つだけ。


  1. 遡給の実務 …… 4月に遡るお金をどう計算して、どう払うか

  2. 対象者の範囲 …… 年度途中に退職した職員はどうするか。非常勤はどうか

  3. 計画書と実績報告書への反映 …… ここを間違えると監査で指摘されます


個別のZoom相談も承っております。「うちの園の場合はどうなるか」という具体的なご相談ですね。園内研修もオンラインで行っております。

▶ お申し込み・詳細はホームページから


処遇改善等加算/人事院勧告分セミナー


処遇改善等加算 個別Zoom相談




処遇改善等加算セミナー 全6講座|オンデマンド講座パック

ライブ講座も毎月開催しておりますが、処遇改善等加算はなかなか難しいところです。

「静かな落ち着いた状況で何度も繰り返し見たい」「ちょうど実務をやっているときに確認でチェックしたい」——そういうご要望もいただいております。ですので、オンデマンドでご受講いただける形をご用意しました。


プラン

内容

実務対応パック(3講座)

配分計画・実績報告・人勧分

フルパック(6講座)

上記+経営改善・その他すべて。55,000円(税込)/14,300円割引

  • 1講座ずつのお申し込みも可能です

  • フルパックは年度末までいつでも視聴いただけます


処遇改善等加算セミナー オンデマンド講座




保育士等キャリアアップ研修のご案内

8月末までにお申し込みいただければ、東京都以外の方も10%割引(1,750円割引)で受講いただけます。




ご利用にあたって

・複数施設でのご利用をご希望の場合は、施設数分のお申込みをお願いいたします。

・視聴URLおよび教材の第三者への共有・転載・SNS等への投稿は固くお断りいたします。

・教材(シミュレーションシート等)の二次配布・改変・商用利用はできません。

・講義内容は収録時点の制度に基づいております。

・お申込み後のキャンセル・返金はお受けできません。


お申込みの流れ

フォーム送信 → 3営業日以内に受付メール(ご請求金額・お振込先)→ ご入金確認後2営業日以内に配信メール(視聴URL・教材・視聴期限日)



お問い合わせ

特定非営利活動法人 すずらんチャイルドケア

人財育成部 部長 太田 宏彰

〒250-0862 神奈川県小田原市成田475-17 ゼフィールU201

TEL 0465-87-7649




ご質問はホームページのお問い合わせフォーム、または動画のコメント欄からもお受けしています。「ここが違うのでは」というご指摘も、ぜひお寄せください。

コメント


bottom of page