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保育所保育指針の歴史と今【第3回】原文を読む|6領域と全11章の骨組み

11 分前
読了時間: 8分

まずは解説動画をご覧ください(約17分)


▲ 保育所保育指針の歴史と今 第3回。昭和40年版の原文を一緒に開いていきます。


昭和40年、1965年。日本で初めての保育所保育指針が誕生しました。

第1回では、指針がなかった時代の保育所を。第2回では、その指針が生まれた背景をたどりました。

今日はいよいよ、その中身です。昭和40年版の原文と構成を、一緒に開いていきます。

60年近く前の文章です。ところが読んでみると、「あれ、今と同じことを言っているぞ」という発見があったり、逆に「ここは今と違うんだ」という驚きがあったり。昔の保育所保育指針を読むのは、実はとても面白いんです。




前回の要点を3つだけ

原文に入る前に、さっと確認しておきます。

ひとつ、昭和40年版は通達でした。ルールというより「この保育の仕方を参考にしてくださいね」という性格のものだった、ということです。

ふたつ、この指針は児童福祉施設の最低基準の決まりを根拠に作られました。

みっつ、中身は子どもの発達、つまり年齢に応じた育ちの道筋に沿って書かれていました。

この3つを頭に置いて、では実際に開いていきましょう。




全部で11章ありました

まず全体の骨組みです。目次から見ていきます。

昭和40年版は、全部で11の章でできていました。


内容

第1章

総則

第2章

子どもの発達上の特性

第3章〜第9章

年齢ごとの保育内容

第10章

指導計画作施錠の留意事項

第11章

保健と安全管理上の留意事項


ここで注目していただきたいのは、11章のうち半分以上が、年齢ごとの保育内容だということです。

それだけ一人ひとりの発達段階を大事にして、きめ細かく書こうとしていたわけですね。

いまの平成29年版はどうでしょうか。全部で5章です。総則、保育の内容、健康及び安全、子育て支援、職員の資質向上。

お気づきでしょうか。

昭和40年には、子育て支援も、職員の資質向上も、章としてはまだなかったんですね。

これらが独立した章になるのは、ずっと後の時代の話です。章の構成そのものが、時代とともに変わってきたということなんですね。




保育の目標|ここは原文のまま味わってください

では、いよいよ原文を読んでいきます。

まずは、保育所保育指針が掲げた保育の目標。昭和40年版の5ページに書かれている一節です。


子どもは豊かに伸びていく可能性をそのうちに秘めている。その子どもたちが現在を最もよく生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎をつちかうことが保育の目標である。

いい文章だと思いませんか。

60年近く前に書かれた言葉ですが、今読んでも胸にすっと入ってきます。

いまの言葉に噛み砕くと、こうなります。


子ども一人ひとりが持つ無限の可能性を信じる。今この瞬間を幸せに過ごせるように支える。そのうえで、これから生きていくために必要な力の根を、この時期に育てる。それが保育の目標だ、ということです。


今この瞬間を大事にすることと、未来の力を育てること。この2つを両立させる考え方。


実はこれ、いまの保育所保育指針にもまっすぐ受け継がれています。現行の指針にも「現在を最も良く生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培う」という言葉が並んでいます。

ですから骨格は、驚くほど変わっていないんですね。




保育の内容は6領域だった

次に保育の内容です。

昭和40年版では、4歳児以上の保育内容を6つの領域で整理していました。

健康、社会、言語、自然、音楽、造形。この6つです。

ここは間違いやすいので念を押させてください。当時の幼稚園のほうは「音楽リズム」「絵画製作」という名前でした。でも保育所の指針は「音楽」「造形」と、あえてシンプルな言葉を選んでいます。保育所ならではの工夫なんですね。

中身をざっくり言うと、こうなります。


領域

扱っていたこと

健康

体の発達、健康や安全の習慣

社会

保育者や友達との関わり、集団の決まり

言語

話を理解して、自分の思いを伝えること

自然

動植物や自然現象への興味。数や形の感覚も含む

音楽

歌ったり、リズムを楽しんだり

造形

描いたり作ったりの創造的な活動




いまの5領域と並べてみます

そして、ここが面白いところです。いまの5領域と並べると、つながりが見えてきます。


昭和40年(6領域)

いま(5領域)

社会

人間関係

自然

環境

言語

言葉

音楽・造形

表現

健康

健康


社会は人間関係へ。自然は環境へ。言語は言葉へ。そして音楽と造形の2つが1つになって、表現へ。

名前も数も変わったけれど、扱う中身の芯は、しっかり受け継がれているんですね。




年齢の区切りに時代が刻まれています

もうひとつ、面白いところを見ておきましょう。年齢の区切りです。

昭和40年版は、こういう区分でした。

1歳3か月未満児。1歳3か月から2歳までの幼児。そして2歳児、3歳児、4歳児、5歳児、6歳児。

お気づきになりましたか。

いちばん最初が、0歳児ではなく「1歳3か月未満児」だったんです。

これは当時の時代背景が透けて見えるところなんですね。いまのように産休明けのごく小さな赤ちゃんからお預かりするという形が、一般的になる前の区分なんです。

区切りの言葉ひとつにも、その時代の子育ての姿が刻まれている。原文を読むって、こういう発見があるから面白いんですね。

ちなみに、この「1歳3か月未満児」という区分は昭和40年版の特徴です。いまの呼び方に置き換えず、当時のまま味わうのがポイントです。




今日のまとめ

昭和40年版を実際に読んで、見えてきたこと。

構成は全11章で、その半分以上が年齢ごとの保育内容だった。保育の目標は「子どもは豊かに伸びていく可能性をその内に秘めている」。保育内容は6領域、健康・社会・言語・自然・音楽・造形。年齢区分は1歳3か月未満児から。

時代が刻み込まれていますね。そして、その芯は今の指針にもしっかり受け継がれています。

昔の指針は、決して古くて使えないものではありません。 むしろ今の指針のルーツが、ここに詰まっています。読めば読むほど、今とつながっている。それが昭和40年版を読んで分かることなんです。

でも、社会は変わり続けます。だから指針も、この後ついに改定を迎えることになります。




指針がないまま保育をしていた時代を想像してみる

ここからは、収録を終えたあとに考えていたことを書き添えます。

驚きじゃないですか。1965年の指針、今から61年前の指針の骨格が、そこまで変わっていなかったんですね。「現在を最もよく生きる」という、あの指針の言葉が、もうこの時にはあったということなんです。

そして11章ですよ。今は全部で5章ですからね。それが11章あって、しかも年齢ごとの保育に関して、すごく細やかに書かれていたということだったんです。

どうでしょうか。当時の時代の人たちから考えると、まだ指針というものが全くないままに保育をされていた、という時ですよね。

ちょっと想像していただいて。60年後には、こういうふうに指針もあったり、研修もあったりというところですけれども、その当時からすると、まだ子育てというところが、感覚で、または知っている知識でやられていたんじゃないかな、と推測いたします。

そのうえで、まずはこの年齢ごとの保育というのが、最初の指針には重要だったんじゃないかと思うんです。

今も年齢ごとの保育の内容やねらいは書いてありますけれども、当時これだけあったというところは驚きですね。

また、今でいう5領域ですね。これも6領域とありますが、ほぼその時の言葉と、言葉は変われど、そこまで変わっていないのかな、というところも驚きでございました。

ただ今の平成29年版については、ここに子育て支援や職員の資質向上というところがありましたので、こういったところは非常に時代背景を映し出すところだと思います。またこの後の回で詳しく見ていきます。




次回は、初めての改定です

次回はいよいよ、最初の改定です。

昭和40年から25年後。1965年から25年後ですから、1990年、和暦で言うと平成2年です。

25年間、指針は変わりませんでした。そして四半世紀を経て、第1次改定を迎えます。

なぜ第1次改定が起こったのか。時代は保育所保育指針に何を求めたのか。そして指針はどう変わったのか。あの6領域が5領域へと姿を変えるのも、この回です。

まだ 【第1回】 、【第2回】をご覧になっていない方は、指針がなかった時代のお話から順にご覧いただくと、流れがつながります。




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