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公定価格の歴史と今【第1回】処遇改善等加算の「なぜ」は歴史の中にある|区分1のルーツは昭和47年

6 時間前
読了時間: 12分

まずは解説動画をご覧ください(約18分)


▲ 新シリーズ「公定価格の歴史と今」の第1回です。今の処遇改善等加算のルールの中に、昭和の制度がちゃんと残っていることを、実物の資料でお見せします。


今日から新しいシリーズを始めます。タイトルは「公定価格の歴史と今」。副題は「処遇改善等加算はどこから来たのか」です。


ふだん私は、セミナーで処遇改善等加算の配分計画や実績報告書の書き方をお伝えしています。それは、今の制度をどう使うかの話です。このシリーズでは、その裏側にある「なぜ今こういう形になっているのか」を、国の資料をさかのぼって、一緒にたどっていきます。

第1回はプロローグです。今日の到着点を先にお伝えしておきます。今の加算のルールの中に、昭和の制度がちゃんと残っている。 これを実物の資料でお見せします。




セミナーで毎回いただく、3つの声


セミナーでいただく声

1

なぜ、職員の平均経験年数で加算率が変わるんですか?

2

区分1・区分2・区分3。なぜ3つに分かれているんですか?

3

毎年のように新しい加算や減算が出てきて、追いかけるだけで精一杯です


どれも本当にそうですよね。通知を最初から読んでも、ルールは書いてあるのに、なぜそうなっているのかはほとんど書かれていません。

これは、園の古いしきたりに似ています。新人の先生に「お昼寝のあと、なぜこの順番で片付けるんですか」と聞かれて、ベテランの先生が「昔、こういうことがあってね」と話すと、すっと腑に落ちますよね。理由が分かると、ルールは「覚えるもの」から「納得するもの」に変わります。処遇改善等加算の制度も同じです。




今の処遇改善等加算は「地層」のようなもの

ここが今日いちばんお伝えしたいことです。今の処遇改善等加算は、ある日突然作られたものではありません。時代ごとに積み重なった地層のようなものです。


層

時期

できごと

いちばん上(今の地面)

令和7年度(2025年度)

3つの加算が区分1・2・3として1つにまとめられた


令和4年(2022年)

加算Ⅲ


平成29年(2017年)

加算Ⅱ


平成27年(2015年)

処遇改善等加算

いちばん下

昭和47年度(1972年度)

民間の保育所の職員の給料を上乗せするためのお金が、予算に登場


いちばん上の地面だけを見ていると、でこぼこの理由が分かりません。でも掘ってみると、下の層の形が上の地面の形を決めている。このシリーズは、その地層を1枚ずつ掘っていく旅にしたいと思います。




旅に出る前に、言葉を2つ

言葉

意味

公定価格

国が決めた、保育にかかる費用の基準額。こども1人あたり、地域や定員、年齢によって月額いくらと決められている。園の収入の土台になる物差し

処遇改善等加算

その公定価格に上乗せされる、職員の給料を上げるための加算。今は区分1「基礎分」、区分2「賃金改善分」、区分3「質の向上分」の3つに分かれている


今日は、このうち区分1「基礎分」に注目します。いちばん地味に見えて、実はいちばん古い地層につながっている部分だからです。




今の区分1|長く勤めるほど加算率が上がる「階段」

こども家庭庁が公表している処遇改善等加算の説明資料(「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について(令和7年度以降)」6ページ)の、区分1のページです。グラフは、横の軸が職員の平均経験年数、縦の軸が加算率です。


平均経験年数

加算率

0年

2%

1年ごと

1%ずつ上がる

10年以上

12%


階段のような形です。つまり、長く勤めている職員が多い園ほど、区分1のお金が多く入るしくみです。表の「趣旨・目的」の欄には、「長く働くことができる職場を構築する」と書かれています。この言葉は、このあと何度も出てきますので、覚えておいてください。


架空の園で計算してみる

常勤の先生が5人いる園です。


先生

経験年数

Aさん

2年

Bさん

5年

Cさん

8年

Dさん

12年

Eさん

13年


まず全員を足します。2+5で7、7+8で15、15+12で27、27+13で40。合計で40年です。これを5人で割ります。40÷5で、平均8年。先ほどの階段で8年の段を見ると、加算率は10%です。

ここで少し想像してみてください。もしDさんとEさんが辞めて、新卒の先生が2人入ったら。2+5で7、7+8で15。新卒の2人は経験年数0年なので、合計は15年のままです。5人で割ると、平均3年。加算率は5%まで下がります。

ベテランが辞めると、園に入るお金が減る。 だから国は、長く働ける職場を作ってほしい、というわけです。

なお、実際は月単位で数えて、6か月以上の端数は1年とするなどの細かい決まりがあります。今日は分かりやすく、年でそろえました。




「長く働くことができる」は、どこに書かれているのか


今の通知

「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について」(令和7年4月11日、こども家庭庁・文部科学省)という通知の、第1の1「目的」です。こども家庭庁ホームページの「子ども・子育て支援制度」のページ、「処遇改善等加算に関する情報」の欄に載っています。令和8年(2026年)4月8日に最後に改正された、今まさに使われている通知です。

その目的には、「『長く働くことができる』職場環境を構築し」と、かぎかっこまでつけて、わざわざ強調されています。

たとえば、ある園長先生が「どうして区分1の申請に、キャリアパスの書類まで要るの?」と思ったとします。答えは、この一文にあります。長く働き続けられる職場を作ることが、この加算のいちばんの目的だからです。


11年前の最初の通知

時計の針を11年前に戻します。平成27年(2015年)3月31日に内閣府・文部科学省・厚生労働省から出された、処遇改善等加算の最初の通知(府政共生第349号ほか)です。こども家庭庁ホームページの「法令・通知等」のページの中、過去の通知の一覧に残されています。

目的の欄には、「『長く働くことができる』職場を構築する必要がある」とあります。

今の通知とほとんど同じ言葉です。違うのは「職場」が「職場環境」になったくらいです。この11年の間に、加算は何度も形を変えました。それでも目的の言葉は、ほとんど変わっていません。ここに、区分1という層の古さが現れています。




さらに下の層|民間施設給与等改善費

平成21年(2009年)、国の審議会(社会保障審議会少子化対策特別部会)の第1次報告の関連資料113ページには、こう書かれています。民間施設給与等改善費は、常勤職員1人あたりの平均勤続年数を基礎に、加算率を適用した運営費を支給する。


平均勤続年数

加算率

4年未満

4%

4年以上7年未満

8%

7年以上10年未満

10%

10年以上

12%


どうでしょう。先ほどの区分1の階段と、そっくりではありませんか。長く勤めるほど加算率が上がる。そして、いちばん上が12%。これが、処遇改善等加算が生まれる前の、保育所の運営費のしくみだったのです。



昔の民間施設給与等改善費

今の区分1

階段の段数

4段

11段

何で決まるか

平均勤続年数

平均経験年数

いちばん上

12%

12%


段の刻みは細かくなりましたが、長く勤めるほど上がる、いちばん上は12%という形は同じです。

たとえるなら、紙の連絡帳と、今の登降園アプリのようなものです。紙からアプリに変わって、記録できることは細かくなりました。でも、保護者に今日のこどもの様子を伝えるという役割は変わっていません。制度も、器が変わっても、中身の考え方は受け継がれているのです。


「民改費」とは何だったのか

民間施設給与等改善費は、現場では略して「民改費」と呼ばれていました。名前を分解すると分かりやすいです。民間施設、つまり社会福祉法人などが運営する民間の保育所の、給与を改善するための費用、ということです。

なぜ民間だけなのか。昭和47年(1972年)の厚生白書には、民間の施設の職員と公立の施設の職員との間に給与の差があったことが、「格差」という言葉で書かれています。平成12年(2000年)6月16日の国の通知(「保育所運営費の経理等について」の運用等について、問16)にも、民改費の目的は「公・私施設間の職員給与格差の是正」だと書かれています。

同じこどもを預かっているのに、公立か民間かで給与に差がある。その差を少しでも埋めるために、勤続年数に応じて運営費を上乗せした。これが民改費です。


記録に出てくるのは、昭和47年度

厚生労働省のホームページの「過去の白書」に載っている、昭和47年版の厚生白書(各論 第4編 第1章 第6節「児童福祉施設等運営費の改善」)です。厚生白書は、当時の厚生省が毎年、国の取り組みをまとめた報告書です。


特に民間施設職員の給与改善のための経費として民間施設給与等改善費が計上された。

「計上」というのは、予算に組み込まれたという意味です。当時、保育所などの運営費は「措置費」と呼ばれていました。措置費については、このあとの第3回でじっくりお話しします。

昭和47年度(1972年度)から令和8年度(2026年度)まで、54年。区分1という層のいちばん下の地層は、ここにあったわけです。




1本の線にしてみる

年度

できごと

昭和47年度(1972年度)

民改費が予算に計上される

平成25年度(2013年度)

保育士不足を受けて、保育士の処遇改善のための臨時の事業が始まる。国の通知に「民改費を基礎に」と書かれている

平成27年度(2015年度)

子ども・子育て支援新制度とともに処遇改善等加算が生まれ、民改費の役目を引き継ぐ

平成29年度(2017年度)

経験を積んだ職員のための加算Ⅱ

令和4年度(2022年度)

コロナのあとの賃上げで加算Ⅲ

令和7年度(2025年度)

3つが区分1・2・3にまとめられる


1つ1つの点には、その時代の社会の問題と、国の判断があります。このシリーズでは、この点を1つずつたずねていきます。


シリーズの地図になるグラフ

令和7年(2025年)12月23日に、こども家庭庁の審議会(子ども・子育て支援等分科会 第13回、資料1-1の2ページ)で示された「保育士等の処遇改善の推移」というグラフがあります。左から右へ、平成24年度から令和7年度までの改善率が積み上がっています。

左のほう、平成25年度の棒に「安心こども基金において創設」と書かれているのが、先ほどの臨時の事業です。いちばん右、令和7年度の補正予算案のところには「計+約39%」と書かれています。

ただし、下の注意書きをご覧ください。この改善率は、各年度の予算における改善率を単純に足し上げたもので、実際の改善率とは異なる、と国自身が断っています。数字だけがひとり歩きしないよう、ここは気をつけたいところです。




このシリーズの読み方|4つの順番

どの回も、同じ読み方でお話しします。


順番

何が起きるか

例

1

社会の問題が起きる

保育士が足りない、待機児童が多い、痛ましい事故が起きた

2

政府が方針を決める

閣議決定や経済政策

3

通知や告示が出る

―

4

公定価格の加算や減算として、園のお金に現れる

―


この順番が頭に入っていると、新しい加算や減算が出たときに、国はいま園に何を求めているのかを、自分で読めるようになります。加算の書類をただ埋める作業から、意味の分かる仕事に変えていきましょう。




これからの予定(全13回)

回

テーマ

第2回

総集編|保育所のお金のおよそ80年を一気に見渡す

第3回〜第6回

1947〜2004年|児童福祉法と措置、民改費、措置から選択へ、三位一体改革

第7回・第8回

新制度と公定価格の誕生|少子化対策特別部会から三党合意へ、子ども・子育て会議と0.7兆円

第9回〜第11回

処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ|民改費と臨時特例事業の合流、一億総活躍プランとキャリアアップ、コロナと見える化

第12回・第13回

量から質へ・減算|待機児童対策・無償化・こども未来戦略、安全計画・経営情報の報告


次回の第2回は、総集編です。今日は区分1という1本の線だけを追いかけましたが、第2回では、戦後すぐの児童福祉法から措置費、三位一体改革、子ども・子育て支援新制度、そして令和の加算と減算まで、保育所のお金のおよそ80年を一気に見渡します。シリーズ全体の地図を手に入れてから、第3回以降で1つずつ細かく見ていきましょう。




収録を終えて

処遇改善等加算や公定価格が、そもそもどのような歴史を経て今の形になっているのか。FAQの解説もやっていますが、「そもそもなぜ今の形になったのか」は分からないですよね。古い資料をいろいろ読み解きたいと思っていて、やっとこぎつけました。

歴史をたどると、制度がどう作られ、お金がどう流れているのかが分かってきます。そうすると、処遇改善等加算の仕事が、単なる事務仕事や重い仕事から、意味の分かる、楽しい仕事に変わっていきます。一緒に学んで、楽しく仕事ができるようにしていきましょう。




「では、うちの園は今年、何を書けばいいのか」と思ったら

歴史で「なぜ」が分かると、次に気になるのは「では、うちの園は今年、何をどう書けばいいのか」ではないでしょうか。提出の時期が近づくたびに、去年の書類を開いて、見よう見まねで埋めている。そんな声をよく伺います。




◆処遇改善等加算セミナー(Zoom)◆

すずらんチャイルドケアでは、処遇改善等加算のセミナーを、テーマ別の講座に分けてZoomで開いています。今日の回とつながるのは、①超基礎です。

提出の年間スケジュールと、それぞれの書類の目的を一から整理します。受けたあとは、「今の時期は何をする月なのか」が分かり、通知を開いたときに、自分で制度の地図が描けるようになります。


①超基礎(ライブ・170分)


日程

2026年 10月 16日(金)・11月 20日(金)・12月 18日(金)ほか

時間

13:10〜16:00

受講料

8,800円(税込)

アーカイブ(ご希望の方のみ)

+2,200円(税込)。配信日から約1か月ご視聴いただけます(アーカイブのみのお申込みはできません)





「うちの園の場合はどうなるのか」を個別に聞きたい方は、「処遇改善 何でも個別相談(Zoom)」もご利用ください。あなたの自治体、あなたの園に合わせて個別にお答えします。1時間8,800円(税込)、2026年度の処遇改善セミナーに参加された方は1時間3,300円(税込)(初回限定)です。面談の議事録もお渡しします。





◆処遇改善等加算 オンデマンドパック◆

決まった日に時間を取るのが難しい方には、オンデマンドパックもご用意しています。6つの講座を録画で、お好きな時間にご覧いただけます。お昼寝の時間や事務仕事の合間に少しずつ見て、園の書類と見比べながら進められます。



内容

フル6講座パック

55,000円(税込)。単品を全部そろえるより14,300円お得。令和9年(2027年)3月31日まで視聴できる

実務3点セット(超基礎・配分計画・実績報告)

33,000円(税込)

単品

1講座ずつのお申込みもできる




お問い合わせ


特定非営利活動法人 すずらんチャイルドケア

人財育成部 部長 太田 宏彰


〒250-0862 神奈川県小田原市成田475-17 ゼフィールU201

TEL 0465-87-7649




ご質問はホームページのお問い合わせフォーム、または動画のコメント欄からもお受けしています。


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