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国の食育計画に「窒息・誤嚥」が入りました|第5次食育推進基本計画

  • 3 時間前
  • 読了時間: 11分

まずは解説動画をご覧ください(約20分)


▲ 第5次食育推進基本計画で、保育所・認定こども園に関わるのはどこか


本日は第5次食育推進基本計画のお話をします。

……と申し上げると、**「また新しい計画か」**と思われた方、いらっしゃいますよね。

私も、実はそう思いました。

処遇改善等加算があって、こども誰でも通園制度があって、経営情報の見える化があって。そこにまた食育の計画ですね。正直、いくつ覚えればいいんだという気持ちになりますよね。

ただ、今回は少し事情が違います。

理由は3つあります。


  1. 元になっている食育基本法という法律そのものが、令和8年5月27日に改正されました。制定から20年経って、初めての大きな改正です

  2. その改正を受けて、令和8年6月24日に第5次の計画が決まりました

  3. そしてこの計画の中に、保育所と認定こども園に向けた一文が新しく書き加えられています


この一文が、今日いちばんお伝えしたいところです。

この記事は全4回シリーズの1回目です。今日は結論から先にお話しします。

今日のゴールは3つ


  1. 第5次で何が変わったのかを、3つに絞って言えるようになること

  2. そのうち、保育所と認定こども園に直接関わるのはどれかが分かること

  3. 令和8年度に園として何を見直せばいいかが分かること


今日は歴史の話はしません。 そもそも食育推進基本計画とは何なのか、なぜ20年前に始まったのかは第2回で。第1次から第4次までの20年間の移り変わりは第3回でじっくり扱います。今日は、今この瞬間の話だけに絞ります。




先に結論|変わったことは3つです

1つ目。重点事項が丸ごと入れ替わりました。 これから5年間、国が特に力を入れることです。

2つ目。目標の並べ方が変わりました。 一人ひとりが取り組む目標と、地域が取り組む目標の2つに分けられました。

3つ目。目標の数字がほとんど達成できないまま、目標そのものが下げられました。

この3つを順に見ていきます。その後で、保育所と認定こども園に直接関わるお話をします。




その前に言葉の整理を|園の計画と同じ入れ子です

食育推進基本計画とは、食育基本法という法律に基づいて、国がおおむね5年ごとに作る食育の方針です。

決めているのは農林水産省です。厚生労働省でもなく、こども家庭庁でもなく、農林水産省。

ここは意外に思われる方が多いところです。 頭の片隅に置いておいてください。なぜ農林水産省なのかは、第2回でお話しします。

そしてここが大事なんですが、この国の計画が、そのまま園に降りてくるのではありません。

その間に、都道府県と市町村が入ります。

これ、園の計画の作り方とまったく同じですね。


国・自治体

園では

国の食育推進基本計画

全体的な計画

都道府県・市町村の食育推進計画

年間指導計画

園の食育の計画

月案


上の計画の考え方を受けて、下に行くほど具体的になっていく。食育も同じで、入れ子になっています。

ミニ解説を1つ。都道府県と市町村がこの計画を作ることは、法律で努力義務とされています。

努力義務というのは、やらなければ罰則があるではなく、努めなければならないという書き方のことです。

ただ、努力義務とはいっても、令和7年度までに92.9%の市町村がすでに計画を作っています。ほとんどの自治体が持っているということなんですね。

ということは——国の計画が変わると、これから市町村の計画が順に置き換わっていく。その後で園に何かが降りてくる。この順番をまず頭に入れておいてください。




なぜ重点事項が丸ごと入れ替わったのか

理由は単純です。元の法律が変わったからです。

令和8年5月27日、食育基本法の一部を改正する法律が公布・施行されました。

ミニ解説を1つ。公布とは世の中に知らせること施行とは実際に効き始めることです。

この2つは何ヶ月かずれることが多いのですが、今回は同じ日です。公布された日から、もう効いています。

この改正で法律に新しく入った言葉を3つご紹介します。


言葉

意味

食料安全保障

日本が食べるものを、これから先も安定して手に入れられるようにするという考え方

農林漁業教育

食を支える農業・林業・漁業への理解を深める教育。今回初めて法律に位置づけられました

大人の食育

食育はこどもだけのものではない、大人にも必要だという考え方


この3つが、そのまま第5次の重点事項になります。だから重点が丸ごと入れ替わったんですね。

順番としては、法律が先、計画が後です。

これも園と同じですよね。保育所保育指針が変わって、その後に園の全体的な計画を作り直す。あの順番とまったく同じです。




変化①|重点事項が入れ替わりました

ミニ解説をします。**重点事項とは、園で言う「今年度の重点目標」**だと思ってください。全部を等しくやるのは無理ですから、この5年間はここに力を入れますという宣言です。


第4次(令和3〜7年度)

第5次(令和8〜12年度)

生涯を通じた心身の健康を支える食育

学校等での食や農に関する学びの充実

持続可能な食を支える食育

健全な食生活の実現に向けた「大人の食育」の推進

新たな日常やデジタル化に対応した食育

国民の食卓と生産現場の距離を縮める取組の拡大


第4次の3つ目でお分かりのとおり、第4次は感染症の流行の真っただ中で作られた計画でした。

見比べていただくと分かるとおり、感染症とデジタルの色が消えて、代わりに農業と大人が前に出てきました。

ここは正直に申し上げますが、保育所から見ると、この三本柱はやや遠く感じる並びです。

3つとも、学校の話、大人の話、農業の話に見えます。

もし主任さんから「これ、うちの園に関係あるんですか」と聞かれたら、この三本柱だけを見る限り、答えにくいと思います。

ただ、計画の先を読んでいくと話が変わります。 それはこの後お話しします。




変化②|目標を「個人」と「地域」に分けました

第4次までは、16個の目標がずらっと横に並んでいました。

第5次ではこれを2つに分けています。


区分

誰が取り組むか

個人目標

国民一人ひとりが自分で取り組む目標

地域目標

地域や自治体が主体になって取り組む目標


これも園でやっていることと同じなんですね。

保育所には、職員一人ひとりの自己評価と、園としての自己評価がありますよね。同じ振り返りでも、誰が主語なのかで分けている。あれと同じ整理です。

ではなぜ分けたのか。誰の宿題なのかをはっきりさせるためです。

そしてもう1つ。第5次では、目標の達成状況を毎年調べて、公表して、分析して、必要なら中身を直す。このことが計画にも法律にも書き込まれました。

ミニ解説をします。計画を立てて、やってみて、振り返って直す。この繰り返しのことを、資料ではPDCAサイクルと書いています。

園で言えば、月案のいちばん下にある反省欄ですね。書きっぱなしにせず、翌月の計画に生かす。あれを国全体でやりますということです。




変化③|目標が達成できないまま、目標値が下げられました

ここは少し重い話になります。

第4次の目標はほとんど達成できませんでした。そして第5次では、その目標値そのものが下げられています。


項目

第4次の目標

実際

第5次の目標

朝ごはんを食べないこどもの割合

0%

6.4%

5%以下

家族と一緒に食べる回数

週11回以上

週8.6回

週10回以上

若い世代(20代・30代)で朝ごはんを食べない人の割合

15%以下

28.2%

25%以下


1行目をご覧ください。第4次の目標は0%でした。全員が朝ごはんを食べている状態を目指していたわけです。 実際は6.4%。そして第5次の目標は5%以下に改められました。ゼロを目指すのはやめたということです。

3行目もご覧ください。目標のほぼ倍あります。

いかがでしょうか。5年かけてほとんど動かなかった。むしろ悪くなっているものもある。

これは園の目標作りでも起こることかもしれません。 年度の初めに「今年こそ全員が」と高い目標を立てて、年度末に届かない。そして翌年、少し現実的な数字に直す。あれと同じことが、国の計画でも起きているということです。

第5次の資料自体、物価の上昇などで安さや手軽さを優先する傾向が強まって、食生活の乱れが見られるとはっきり書いています。国自身が認めているということです。




ここからが本題です|就学前のこどもに対する食育の推進

ここまでは国全体の話でした。ここからが本題です。

第5次の中に、保育所と認定こども園に向けた項目があります。**「就学前のこどもに対する食育の推進」**という項目です。

ここに、第4次にはなかった一文が新しく書き加えられました。


その際、こどもの発達に応じ、窒息や誤嚥の防止等の食に関する安全面にも十分配慮する

ここが今日いちばん大事なところです。

国の食育の計画に、「窒息」と「誤嚥」という言葉が入りました。これは第4次にはありませんでした。

では、これが何を意味するのか。食育と安全管理は、別々のものではないということです。

給食の時間を思い浮かべてください。園で育てた野菜をこどもたちが食べる。行事食をみんなで囲む。これは食育です。でも、まったく同じその時間に、誤嚥のリスクもあります。

実際に配膳している先生方は、この2つを同時にやっているわけですね。

楽しく食べさせながら、一人ひとりの口元を見ている。その現場の実態に、国の計画がようやく追いついてきた。私はそう受け止めております。

断定はしません。 この一文が入ったことで、指導監査で新しく何かを求められるようになるかどうかは、現時点では分かりません。

ただ、園の食育の計画を見直すときに、安全面の記載があるかどうかを確認しておくことは、損にはならないと思います。




同じ項目に、もう1つ変化があります

第4次では、園の食育についてこう書かれていました。


保護者や地域の多様な関係者との連携・協働により、食に関する取組を推進する

第5次ではこうなっています。


保護者への情報提供、相談支援や地域の多様な関係者との連携・協働により、こども一人一人の発育や発達に適した食に関する取組を推進する

2つ増えているのが分かりますでしょうか。

  1. 情報提供と相談支援が、はっきり書かれました

  2. こども一人一人の発育や発達に適したという言葉が加わりました




そして「大人の食育」がここでつながります

先ほどの重点の三本柱の1つ、「大人の食育」を思い出してください。

20代と30代で、朝ごはんを食べない人が28.2%いました。

この世代は、皆さんの園の保護者そのものです。

送迎のときに「うちの子、朝あんまり食べなくて」と言われていること、ありますよね。

あれは、こどもだけの問題ではないかもしれません。そういう見方が、今回の計画には入っています。

こどもへの食育と、保護者への働きかけをセットにする。ここが保育所にとっての第5次のいちばんの読みどころだと思います。




実務に効く、細かい変化が1つ

第4次では、園が使う資料として**「児童福祉施設における食事の提供に関するガイドライン」**が挙げられていました。

第5次では**「児童福祉施設等における食事の提供ガイド」**に変わっています。

給食室に貼ってあるマニュアルや、園内研修で使っている資料が、古い版になっていないでしょうか。この機会に一度ご確認ください。




これから何が起きるのか

国の計画が変わると、市町村の計画が順に書き換わっていきます。

そして第5次では、市町村ごとの取組の状況を見える化するという方針も入りました。取組の状況が、外から分かる形で公表されていくということになります。

ということは——これから1年から2年の間に、市町村から園に食育に関する調査の依頼が来たり、計画作りの委員をお願いされたりすることがあるかもしれません。

時期は自治体によってバラバラです。 すでに動いているところもあれば、来年度からのところもあるかもしれません。ご自身の市町村の動きを確認してみてください。




今日から園でできる3つのこと|どれも15分です

1つ。園の食育の計画に、窒息や誤嚥といった安全面の記載があるかどうかを確認する。

2つ。給食室や園内研修で使っている資料が、「児童福祉施設等における食事の提供ガイド」に更新されているかを確認する。

3つ。お住まいの市町村の食育推進計画が、いつ改定される予定なのかを、市町村のホームページで確認する。

どれも15分ほどあればできることです。




今日のまとめ

第5次食育推進基本計画は、令和8年6月24日に決まりました。令和8年度からおおむね5年間の計画です。

変わったのは3つ。重点事項の入れ替え。目標を個人と地域に分けたこと。そして目標値が下げられたこと。

その上で、保育所と認定こども園に直接関わるのは、この2つです。

  1. 窒息と誤嚥への配慮が新しく書かれたこと

  2. 保護者への情報提供と相談支援が明記されたこと



このシリーズは全4回です

内容

第1回(今回)

第5次で何が変わったか

第2回

そもそも食育推進基本計画とは何か。20年前に何があったのか。なぜ農林水産省が担当しているのか。そして実は、保育所は国の食育基本計画より1年も早く食育の指針を持っていました

第3回

第1次から第4次までの20年間を一気に振り返ります

第4回

令和8年度に園として何をすればいいのか。実務の話を深く掘り下げます


今日参照したのは、農林水産省が公表した第5次食育推進基本計画の本文と概要、そして文部科学省が令和8年7月7日に出した通知です。

1つ、断定しないようにお伝えしておきます。保育所向けの通知については、こども家庭庁から別に出ている可能性があります。私のほうでは確認が取れていませんので、ご自身でもお調べいただければと思います。




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