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保育所保育指針の歴史と今【第4回】5領域が生まれた平成2年の第1次改定

13 分前
読了時間: 7分

まずは解説動画をご覧ください(約16分)


▲ 保育所保育指針の歴史と今 第4回。指針が初めて改定された平成2年をたどります。


前回は、昭和40年版の原文を実際に読んでみました。全11章の骨組み、6領域、そして「子どもは豊かに伸びていく可能性をその内に秘めている」という保育の目標。60年近く前の文章が、今とつながっていることを確かめましたね。

今日はいよいよ、その指針が初めて改定される瞬間です。

昭和40年から、なんと25年後。平成2年、西暦で言うと1990年の改定です。




25年は、どれくらい長いか

25年って、すごく長い時間ですよね。

いまの保育所保育指針は、だいたい9年から10年に1度の間隔で改定されています。ところが最初の改定は、25年後だったんです。

生まれた赤ちゃんが、もう親になっているくらいの年月です。

その間に、日本の社会も、子育ての形も大きく変わりました。

では、時代は指針に何を求めたのか。そして指針はどう答えたのか。今日はそこを見ていきます。




この25年で、何が変わったのか

まず、ざっくり感じてみましょう。

昭和40年といえば、日本は高度経済成長の真っただ中でした。

それが平成2年になると、日本は豊かになり、その分、新しい課題も増えてきます。

働くお母さんはさらに増え、赤ちゃんを早くから預ける乳児保育のニーズが高まっていく。家族の形も、地域のつながりも、少しずつ変わっていった時代です。

保育の現場も、昭和40年の指針だけでは、だんだん手が届かない部分が出てきました。


今の子どもたち、今の家庭に最も合ったものが必要だ。

そういう声が、自然と高まっていったんですね。




改定の視点は4つ

では、平成2年の改定はどんな視点で行われたのか。国が示した4つの視点があります。

ひとつ目、子どもを取り巻く環境と、子ども自身の変化。

ふたつ目、乳児保育をはじめとする保育ニーズの多様化。

みっつ目、学問的な研究や保育実践が進歩したこと。

そして4つ目、幼稚園教育要領が改訂されたこと。

どれも大事なのですが、今日とくに注目していただきたいのが、4つ目の幼稚園教育要領の改訂です。実はこれが、保育所保育指針の改定の大きな鍵を握っています。




幼稚園が先、保育所が後

どういうことか。時系列で見るとはっきりします。


時期

出来事

平成元年(1989年)3月

幼稚園教育要領が改訂される

平成2年(1990年)3月

保育所保育指針が改定される


お気づきでしょうか。

幼稚園が先に変わって、その次の年に保育所が続いている。

これは例えるなら、先を歩く幼稚園の背中を見ながら、保育所が歩調を合わせに行ったというイメージです。

なぜ合わせる必要があるのか。幼稚園に通う子も保育所に通う子も、同じ時代を生きる同じ子どもたちだからです。就学前に育ってほしい姿が、施設によってバラバラでは困りますよね。だから足並みを揃えていくんです。

この、幼稚園の動きに保育所が呼応していく関係は、この先の改定でも繰り返し出てきます。 覚えておいてください。




6領域が5領域になりました

では具体的に、何がどう変わったのか。いちばん大きな変化から見ていきます。

保育の内容が、6領域から5領域へ変わりました。

昭和40年版は、健康・社会・言語・自然・音楽・造形の6つでしたね。

これが平成2年に、健康・人間関係・環境・言葉・表現という5つの領域に変わります。


昭和40年(6領域)

平成2年(5領域)

健康

健康

社会

人間関係

自然

環境

言語

言葉

音楽・造形

表現


社会は人間関係へ。自然は環境へ。言語は、ひらがなの言葉へ。そして音楽と造形の2つが1つにまとまって、表現になりました。健康だけは、名前もそのまま残っています。

なぜこの組み合わせにしたのか。理由は、幼稚園教育要領との整合性です。幼稚園がこの5領域に変わったから、保育所もそれに合わせた。

そして大事なことがあります。この5領域は、いまの指針でもそのまま使われています。

私たちがいま使っている5領域は、平成2年に生まれたものなんですね。




ほかにも2つ、大きな変化があります

領域の話が大きいので目立ちますが、平成2年の改定には、ほかにも大事な変化がありました。2つご紹介します。


養護の機能をはっきりさせたこと

すべての年齢を通じて、子どもの生命の保持と情緒の安定に関わる基礎的な事項を、きちんと書き込みました。

命を守り、心を安定させる。この養護の土台を、全年齢に共通するものとして明確にしたんですね。


年齢の区分を細かくしたこと

乳児保育の広がりに対応して、年齢の区分がより細かくなりました。前回見た昭和40年版と並べてみます。


昭和40年

平成2年

1歳3か月未満児

6か月未満児

1歳3か月から2歳まで

6か月から1歳3か月未満児

2歳児

1歳3か月から2歳未満児

3歳児〜6歳児

2歳児〜6歳児(1年ごと)


いちばん上に注目してください。昭和40年版では1歳3か月未満児が最年少の区分でしたが、平成2年版では6か月未満児という区分が加わっています。

早くから預けられる赤ちゃんが増えたので、その月齢に応じて、きめ細かく応えようとしたわけです。

こうして見ると、平成2年の改定は、時代の変化に指針が丁寧に応えた改定だったと言えます。




今日のまとめ

昭和40年から25年ぶり、平成2年に初めて改定された。改定の視点は4つ、とくに幼稚園教育要領との整合性が鍵を握った。6領域から5領域へ変わり、いまも使うこの5領域はここで誕生した。そして養護の明確化と、乳児保育に対応した年齢区分の細分化が行われた。

昭和40年版が、保育が自分の言葉を持った回だとしたら、平成2年は、その言葉が時代とともに初めて更新された回です。

保育所保育指針は、一度作って終わりではない。社会に合わせて育っていくもの。そのことがはっきり見えた改定でした。




25年分を振り返ってみると

ここからは、収録を終えたあとに考えていたことを書き添えます。

第4回まで進んできましたので、少し振り返ってみます。

第二次世界大戦が終わった後は、日本中が焼け野原。食料がない、家もない。そんな時代でした。ですから、働きに行く親、懸命に生きる親を支えるものとして、子どもがしっかり保育を受けられる環境を作るということで、保育所ができました。ただ、その時の保育所は託児所に近いものだったとされています。

その後、子どもを保育所に預けるという方が特に多くなっていき、保育所も増え、保育士も増えていきました。そんな中で統一した基準が必要だという声が上がって、保育所保育指針が1965年に誕生しました。

ただ当時は、現在のように告示という法的な縛りがあるわけではなく、通達というものでした。つまり「こういう保育の仕方を参考にしてくださいね」というもので、各年次の保育方法・保育方針について細かく記載されていた、というところです。

ただ、最初の指針の総則、4ページから5ページに書いてある「子どもの現在を最もよく生き」というところについては、保育の目標は今も、60年前も、あまり変わっていなかった。 そんなお話もありましたよね。

そして以前は6領域だったというお話を前回させていただき、今回は1990年、そこから25年経った時に初めて改定がされたんだ、というお話でした。6領域が5領域に変わった。これも大きなところでしたし、また0歳から子どもを預けられるというところも始まりましたので、より明文化されたんだと思っております。

さまざまな変化がある中で、時代に対応して第1次改定がされました。




次回は第2次改定です

次の改定まで、今度はそれほど間が空きません。わずか9年後、平成11年です。

少子化、そして働く女性のさらなる増加。時代の波が、保育所保育指針に何を書き加えさせたのか。

子育て支援という新しい言葉も、ここで登場します。

まだ 【第1回】 からご覧になっていない方は、指針がなかった時代のお話から順にご覧いただくと、流れがつながります。




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