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保育所保育指針の歴史と今【第5回】平成11年、保育所の役割が地域へ広がった

11 分前
読了時間: 8分

まずは解説動画をご覧ください(約17分)


▲ 保育所保育指針の歴史と今 第5回。保育所の役割が地域へ広がった改定をたどります。


前回は、平成2年の第1次改定を見ました。昭和40年から25年ぶりの改定でしたね。

ところが今日お話しする第2次改定は、そこからたった9年後です。平成11年、西暦で言うと1999年。

25年に1度から、9年へ。改定のペースがぐっと早まっているんですね。

これは、それだけ社会の変化が激しかったということです。

では、この9年で何が起きて、指針に何が書き加えられたのか。今日はそこを見ていきます。




平成11年ごろの空気を思い出してみてください

この時期、皆様は何歳くらいでしたでしょうか。1999年です。少し思い出してみてください。

この時期の日本を語るうえで外せない言葉があります。

少子化です。

子どもの数がだんだん減っていく。国もこれに危機感を持ちました。そこで平成6年には、エンゼルプランという子育て支援の国の計画が動き出します。

同じ頃、働く女性はさらに増え、共働きが当たり前になっていきました。

ここに、大事なつながりがあります。

少子化だからこそ、一人ひとりの子どもを社会全体で大切に育てよう。そして、働きながら子育てできるように国が支えよう。

この空気が、保育所に新しい役割を求めていくんです。

ちなみにエンゼルプランとは、平成6年に打ち出された国の子育て支援策の総称です。仕事と子育ての両立、そして多様な保育サービスの充実を進めよう、という方向性が示されました。




改定の視点は4つ

こうした時代を背景に、平成11年の改定は4つの視点で行われました。

ひとつ目、エンゼルプランなど、多様化する保育ニーズへの対応。

ふたつ目、保育所で子育ての相談や指導を行うこと。

みっつ目、児童の権利条約を日本が批准したこと。これは平成6年のことです。

そして4つ目、前回と同じく幼稚園教育要領の改訂。

児童の権利条約というのは、子どもを一人の人間として、その権利を大切にしようという国際的な約束です。日本は平成6年、1994年に批准しました。

前回の平成2年と比べてみてください。子育て支援や子どもの権利といった新しい言葉が、前に出てきているのが分かります。ここが平成11年改定の色なんですね。




いちばん大きな変化|園の中から地域へ

では具体的に何が変わったのか。いちばん大きな変化から見ていきます。

保育所が、地域の子育てを支える役割をはっきり持つようになりました。

これは大きな転換です。

それまでの保育所は、どちらかというと園に通っている子どもと、その保護者を見る場所でした。それが平成11年からは、園に通っていない地域のご家庭の子育ても支えていく。

例えるなら、保育所の役割が、園の堀の内側から地域全体へと、ぐっと広がったイメージです。

その背景には、核家族化や、地域のつながりが薄くなっていったことがあります。

昔ならおじいちゃん、おばあちゃんやご近所さんに相談できたことが、相談しにくくなった。孤立して子育てに不安を抱えるご家庭が増えていく。だからこそ、保育所が地域の子育ての頼れる拠点になっていったんですね。




2つ目|保育士の姿勢が書き込まれた

この改定では、保育士の姿勢や関わり方そのものが指針に書き込まれました。

具体的には、体罰の禁止。そして、乳幼児のプライバシーを守ること。こうした保育士としての基本的な姿勢が、はっきりと明記されたんです。

さらに保育の内容にも、「保育士の姿勢と関わりの視点」という項目が新しく加わりました。

なぜこういうことが書き込まれたのか。先ほどの子どもの権利という考え方とつながっています。

子どもを一人の人間として尊重する。その姿勢を保育の現場でどう体現するか。それを言葉にして示していったわけですね。




3つ目|子どもの安全を守る

3つ目の変化は、子どもの安全に関わるものです。平成11年の改定では、2つの大切なことが新たに書き加えられました。

ひとつは、乳幼児突然死症候群、いわゆるSIDSの予防です。これはいちばん小さな月齢の赤ちゃん、6か月未満児の保育の中で配慮すべきこととして書き込まれました。

もうひとつは、児童虐待などへの対応です。こちらは第12章「健康・安全に関する留意事項」の中に、新たな項目として設けられました。

SIDSについて、少しだけ言葉の確認をしておきます。それまで元気だった赤ちゃんが、睡眠中などに突然亡くなってしまう、原因のはっきりしない病気のことを指します。うつぶせ寝を避けるなどの予防が大切とされ、保育の現場でも強く意識されるようになりました。

子どもの命を守り、子どもを虐待から守る。当たり前のようでいて、これを指針にはっきり書き込んだ意味は、とても大きいんです。

保育所が、子どもの安全を守る最前線でもある。そのことが改めて確認された改定でした。




今日のまとめ

平成2年から9年後、平成11年の第2次改定。改定のペースが加速しました。

背景には少子化とエンゼルプランがあり、働く女性の増加、そして児童の権利条約の批准もありました。

最大の変化は、保育所が地域の子育ての拠点という役割を持ったこと。保育士の姿勢として、体罰の禁止やプライバシーの確保、関わりの視点が新たに明記されたこと。そして安全面では、SIDSの予防と児童虐待への対応が明記されたこと。

一言で言うなら、平成11年は、保育所の役割が園の中から地域へと広がった回です。

子どもと保護者を見るだけでなく、地域の子育てを支え、子どもの権利と安全を守る。保育所の仕事が、ぐっと大きく、そして深くなったということです。




ここまでの3つに共通することがあります

さて、ここまで昭和40年、平成2年、平成11年と見てきました。

この3つには共通点があります。

どれも通達だった、ということです。

ところが次の改定で、その性格が大きく変わります。




次回は、通達から告示へ

次回は平成20年の改定です。

ここで保育所保育指針は、通達から告示へとその姿を変えます。

参考にするものから、守るべき基準へ。

この大きな分岐点を、じっくり見ていきたいと思います。




1999年を振り返って

ここからは、収録を終えたあとに考えていたことを書き添えます。

皆さんにとって1999年は、どんな年でしたか。

私はその頃、高校生でした。ちょうどノストラダムスの大予言なんて話がありましたよね。その時にはまだ、保育ということは全く意識していませんでしたので、今こうして当時のお話をして、「ああ、そういうことが保育業界の中で起こっていたんだな」と、改めて知ることができました。

ひとつ、法律の重さの話をしておきます。

いま保育士試験の対策チャンネルを作っておりまして、10月の後期試験に向けて発信をしているのですが、その中で社会福祉や子ども家庭福祉についても説明をしています。

そこで「では条約は、どの部分に重さとして当たるのか」という話が出てきます。

まず日本国憲法がいちばん重たいわけですよね。その後に各国との条約があって、その後にまた法律などが続いていく。そして指針は、その中でいちばん実務的なものだというところも習いました。

この順番は、次回の告示化の話につながっていきます。




子育て支援は、この時代からでした

そしてこの時代、子育て支援ですね。私も資料をまとめながら、「ああ、子育て支援を始めているのって、確かにこの時期だったんだな」と改めて思いました。

1999年ですから、今2026年ですので27年前ですよね。もうこの時点で子育て支援というものがあったり、地域の中で未就園児の方への対応というのも、保育園の中で実際にやっていくよう明記され始めていたんですね。

やはり核家族化、つまり実家から離れて夫婦だけで生活し、そこに子どもができるということが多くなっていった。日本が豊かになっていった証拠でもありますし、実家で暮らすというよりは、各世帯を持つのが当たり前になっていったところなんでしょうか。

いま日本保育史なんかもやっておりますけれども、昔は「その家に嫁ぐ」なんていうのが当たり前だった時代が、少しずつ日本が豊かになったこともあって、一つひとつ個別になっていった。

ですから、つながりがなくなった分、そのつながりを補うような形ができていった。 補わざるを得なかった、ということですよね。

面白いですね。こういう時代の流れを見ながら、今2026年に保育している私たちが何をしなければいけないのか。または指針というものが、そもそもどういった背景でできているのか。

このシリーズは最終的に、昨年から始まっております保育所保育指針の改定の話に合流していきます。いま第10回まで話し合われていますから、その第10回の解説までやっていこうと思っております。

こういう流れで、時系列でぜひご覧いただいて、この後も楽しみにしていただければと思います。

まだ 【第1回】 からご覧になっていない方は、指針がなかった時代のお話から順にご覧いただくと、流れがつながります。




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