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保育所保育指針の歴史と今【第6回】平成20年、通達から告示へ|基準になった日

10 分前
読了時間: 10分

まずは解説動画をご覧ください(約20分)


▲ 保育所保育指針の歴史と今 第6回。指針が守るべき基準になった日をたどります。


第1回から第5回まで、3つの指針を見てきました。

昭和40年に初めての指針ができ、平成2年に1回目の改定。それまでは25年も空いていたのが、次はおよそ9年、平成11年に2回目の改定がありました。

この3つには、大事な共通点がありましたね。

どれも通達でした。 通達ということは、参考にしてくださいというものだったわけです。平成11年までは、ずっとそうでした。

ところが今日お話しする平成20年の改定で、保育所保育指針の性格が根本から変わります。

参考にするものから、守るべき基準へ。

これは、このシリーズ全体でもいちばん大きな分岐点のひとつです。




告示という言葉

まず、今回のキーワードから確認しましょう。告示です。

これまでの保育所保育指針は通達でした。通達というのは、国から現場へのいわば案内、お知らせのようなもの。こういうふうにやるといいですよ、という参考の位置づけだったんですね。

それが平成20年の改定で、告示になります。

告示というのは、国などが決めたことを正式に、公に示すことです。通達より強い位置づけで、守るべき基準としての性格を持ちます。

ざっくり言えば、参考にしてね、から、守ってください、へと格が上がったんです。

これにより保育所保育指針は、幼稚園教育要領と同じレベルの国の基準になりました。




告示になって変わったこと|3つ

では、告示になったことで具体的に何が変わったのか。3つ挙げます。

ひとつ目、規範性を持つようになりました。

全国どの保育所も、これを踏まえて保育するもの、という重みが出ました。

ふたつ目、平成21年度から、この保育所保育指針に基づいて保育所の指導監査が行われるようになります。

守られているかどうかを、きちんと見る仕組みができたわけですね。

みっつ目、幼稚園教育要領と同じレベルの基準になりました。

保育所は、これまで幼稚園の動きに歩調を合わせてきました。ここでついに、同じ基準という土俵に並び立ったんです。

これは保育の現場にとって大きな意味を持ちました。自分たちの仕事の拠り所が、参考ではなく基準になった。それだけ保育の専門性が、国から正式に認められたとも言えるんですね。




13章が7章になりました

告示と並んで、もうひとつ大きな変化がありました。中身の構成がガラリと変わったんです。

前回の平成11年版は、なんと第13章まであるボリュームでした。それが平成20年版では、7章になります。



平成11年版

平成20年版

性格

通達

告示

章の数

13章

7章

ページ数

約半分にスリム化

解説書

なし

初めて刊行


章の数がほぼ半分。ページ数もおよそ半分にスリム化されました。

これは例えるなら、分厚いマニュアルを思い切ってダイエットして、要点を絞ったハンドブックにしたというイメージです。

このぐっとスリムにすることを大綱化と言います。大きいという字に、綱、そして変化の化ですね。

大綱化というのは、細かいところまで全部書き込むのをやめて、大事な骨組みや大枠を示す方針のこと。細部は各保育所の工夫に委ねるという考え方です。




なぜ、わざわざスリムにしたのか

ここが面白いところです。

細かく全部を決めてしまうと、どの園も同じことをするしかありません。でも大枠だけを示して、細かいところは各園に委ねると、園ごとに自分たちで考えて工夫できる余地が生まれるんです。

つまり大綱化というのは、国が細かく縛るのをやめて、各園の自主性や独自性を尊重するという方向への転換だったんですね。

保育所を信頼して、任せる部分を増やしたとも言えます。園それぞれの特色が、より出やすくなりました。

ここ、不思議に見えるかもしれません。

基準として重みが増したのに、同時に各園の自由も広がった。一見、逆のことが同時に起きているんですね。

でも、これがこの改定のいちばん深いところなんです。




解説書が生まれたのも、このときです

この大綱化には、大切なセットがありました。

保育所保育指針の解説書です。

本体をスリムにした分、「じゃあ、これはどういう意味なの」という疑問が出てきます。そこで平成20年の改定では、厚生労働省から初めて保育所保育指針の解説が刊行されました。

これは保育所保育指針の歴史の中で、初めてのことだったんですね。

その解説書の「はじめに」には、こう書かれています。


この解説書は、告示化された保育指針の内容が、広く保育現場に浸透し、その趣旨が理解されるように、また、保育指針に示される基本原則をしっかりと踏まえた上で、各保育所がそれぞれの特色を生かし、創意工夫を図っていくための助けとなるように作成されました。

各保育所がそれぞれの特色を生かし、創意工夫を図っていく。 先ほどお話しした大綱化の狙いが、国自身の言葉でそのまま書かれているんですね。

イメージとしては二段構えです。本体の保育所保育指針は大枠を示すスリムな指針。そして解説が、そのひとつひとつを詳しく説明してくれる。

この二層構造で、大綱化しても現場が困らないように支えたわけです。

いまも保育所保育指針には本体と解説がありますよね。この2つで1組というスタイルが始まったのが、実はこの平成20年の改定なんです。




今日のまとめ

平成20年、指針が通達から告示へ。守るべき基準になりました。

規範性を持ち、平成21年度から指導監査が始まった。幼稚園教育要領と同じレベルの基準になった。

章の構成は13章から7章へ。ページも約半分に大綱化されました。大綱化によって、各園の自主性や独自性、特色が尊重されるようになります。そして本体を支える解説が初めて刊行され、二層構造が始まりました。

一言で言うなら、平成20年は、指針が基準という重みを持ちながら、同時に各園の裁量も広げたという逆説の改定です。

大枠は基準として示しつつ、中身は現場を信頼して委ねる。この絶妙なバランスが、今の指針の土台になっているということなんです。




なぜ、告示になったのでしょうか

ここからは、収録を終えたあとに調べて考えたことを書き添えます。

2008年、平成20年ですから、今からちょうど18年前ですよね。

少し調べていくと、大元の流れが見えてきます。昭和40年、高度経済成長のただ中にできた保育所保育指針は、一貫して通知でした。つまり参考にしてくださいという位置づけで、法的な拘束力までは持っていなかったんですね。

それが平成20年に告示へと格上げされました。この転換の背景には、いくつかの要因が重なっているようです。3つ挙げます。


背景1|保育の質を全国で担保する必要性

保育所の利用が広がって、保育が社会に果たす役割が大きくなる中で、園によって保育の中身にばらつきがある。この状態を放置できなくなってしまいました。

参考にとどまる通知では、全国どの園でも一定水準の保育を保障するという担保が弱い。そこで規範性を持つ基準に格上げすることで、保育の質を全国的に確保しようとしたわけですね。

告示化によって指針は踏まえるべき国の基準となり、これに基づく指導監査も平成21年度から行われるようになりました。

1965年のいちばん最初の指針も、全国の保育所の指針という位置づけではありました。けれどもまだ「参考にしてくださいね」だった。それを一律にするために、2008年に「これが全員一致する基準ですよ」と定めた。まさに土台ですね。 保育所であるのなら、これが最低限やるべきところですよ、というところになったということです。


背景2|幼稚園教育要領との格を揃える

幼稚園教育要領は、早くから告示でした。法的な基準として位置づけを持っていたんですね。一方、保育所保育指針は通知のまま。同じ就学前の子どもを預かりながら、幼稚園と保育所で拠り所の格が違うという状態が続いていました。

告示化によって、保育所保育指針は幼稚園教育要領と同じレベルの国の基準となり、この格差が解消されました。

第4回、第5回で見た「幼稚園に歩調を合わせる」という流れが、ここでやっと同じ基準の土俵に並ぶという到達点を迎えた、と位置づけられます。


背景3|大綱化とセットの改革

告示化は単独で行われたのではなく、大綱化という中身の改革とセットでした。

細かく全部を書き込む分厚い指針。これを要点を絞った7章へスリム化して、細部を各園の工夫に委ねる。最低限守るべき大枠を国が基準として示し、中身の工夫は現場に任せるという設計だからこそ、告示という強い形式が選べた。 そういう関係だったようですね。

基準と自主性の尊重を、同時に成立させる仕組みだったというわけです。ですから、あわせて大綱化で薄くなった本体を補うために、初めて解説書が刊行されたということになります。

まとめますと、告示化の背景とは、一言で言えば保育所保育の社会的な重みが増して、質の担保が国の責任として求められるようになったということ。それが2008年でした。そこに幼稚園との格差解消という制度的な要請と、大綱化による基準と裁量の両立という設計思想が組み合わさって、この平成20年の改定が実現したということでございます。

1点だけ補足しますと、ここでお伝えした背景は、厚生労働省の研修会資料、指針の解説、そして九州大学の論文などの資料に基づいてお話ししております。




18年経った今、思うこと

かねてからお話ししておりますが、平成20年の段階でここで明らかになったのは、やはりこれが告示になって、国が最低限やるべき基準ですよ、というところです。

ですから、これが土台なんですよね。保育所保育指針が最低限の土台ですから、適切な保育なのか不適切な保育なのか。その「適切な保育」というのは、解説書ではなく、指針の本体のほうに書いてあるんです。

そしてその上で、さらなる独自性、保育所ごとの独自性として保育の質を上げるというところになったら、そこにやはり法人化の根本の理念であったり、目的というものが出てくるわけですね。

ただ現状で言うと、2008年にこうなりましたけれども、そこから18年経った2026年、すべては分かりませんけれども、やはりまだ指針を持っていない、あまり読んでいない。または指針というのは理想だという、少し過去のイメージをそのまま引きずってしまっているのかな、というところがあります。

ですから私も、この歴史を皆様に配信することによって勉強させていただきながら、「指針をなんで読まないんだよ」ではなくて、こういう歴史を知っていただきながら、なぜ今こうしなければいけないのかを、一緒に学んでいきたいと思っております。

今日お聞きになったところの感想などがありましたら、ぜひコメント欄にご記入ください。




次回から、現行の指針に入ります

次回からは、現行の指針、平成29年に告示された今の指針の話に入っていきます。

まずは、なぜ平成29年にあれほど大きな改定が行われたのか。その背景を見ていきます。

乳児保育の充実、そして保育所が幼児教育の場として位置づけられるという大きな変化が待っています。

ここからは少し細かく、条文の解説になっていきます。

まだ 【第1回】  からご覧になっていない方は、指針がなかった時代のお話から順にご覧いただくと、流れがつながります。




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