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保育所保育指針の歴史と今【第8回】3つの視点・5領域・10の姿の関係

10 分前
読了時間: 8分

まずは解説動画をご覧ください(約16分)


▲ 保育所保育指針の歴史と今 第8回。現行指針の骨組みを読み解きます。


前回は、平成29年の改定がなぜ大きく変わったのか、その背景を見てきました。

今日はいよいよ、では中身はどうなっているのかという本文の核心に入っていきます。

今日のキーワードは3つです。

3つの視点。5領域。そして10の姿。

名前を聞くと、聞き馴染みがあるかもしれません。けれども「具体的にこれは何ですか」と聞かれると、うっとなってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

大丈夫です。ひとつずつ丁寧にほどいていけば、きれいにつながります。




まず骨組みから|年齢で物差しが変わります

現行の保育所保育指針の面白いところは、子どもの年齢によって、保育内容を整理する物差しが変わるという点です。

2段構えになっています。

0歳の赤ちゃん、つまり乳児は3つの視点。そして1歳以上の子どもは5領域。年齢に応じて、整理の仕方が分かれているんですね。

なぜ分けるのでしょうか。

0歳の赤ちゃんと、たとえば4歳の子とでは、育ちの姿がまるで違うからです。

赤ちゃんはまだ、心と体が未分化です。つまり、はっきり分かれていません。ですから5つの領域にきっちり分けるのが、まだ難しいんです。

そこで赤ちゃんには、赤ちゃんに合った3つの視点を使う。理にかなっているんですね。




乳児の3つの視点

では、0歳児の3つの視点をご紹介します。平成29年の保育所保育指針、第2章に書かれているものです。


視点

発達の側面

中身

健やかに伸び伸びと育つ

身体的発達

体の育ちに関わる視点

身近な人と気持ちが通じ合う

社会的発達

身近な大人と心が通い合う

身近なものと関わり感性が育つ

精神的発達

触れたり舐めたりしながら、感じる心が育つ


例えるなら、体・心・感性という3つの窓から、赤ちゃんの育ちを見ている感じです。

そしてこの3つの視点は、後で出てくる5領域に滑らかにつながっていくよう作られています。




1歳以上の5領域

続いて、1歳以上の子どもたちの5領域です。

健康、人間関係、環境、言葉、表現。

ここで、覚えがありますよね。ピンときた方、いらっしゃるでしょうか。

そう、第4回で見た、平成2年に生まれたあの5領域です。

この5つが、現在の保育所保育指針でも1歳以上の保育内容の柱になっています。


領域

育つ力

健康

心と体の健康

人間関係

人と関わる力

環境

身の回りの環境への関心

言葉

言葉を使う力

表現

感じたことを表す力


ここで大事なことがあります。

この5つを別々に指導するのではないということです。

ひとつの遊びの中に、5領域がいくつも溶け合って含まれています。

たとえば、友達と砂場で山を作る遊び。

体を動かすのは健康。協力するのは人間関係。砂の感触は環境。話し合うのは言葉。そして作ることは表現。

その全部が、砂場遊びひとつに入っているということなんですね。




育みたい資質・能力|3つの柱

ここからが、平成29年改定で新しくはっきり示されたところです。

まず、育みたい資質・能力。いわゆる3つの柱です。保育を通して子どもに育みたい力を、大きく3つにまとめたものですね。

原文を見てみましょう。第1章に書かれています。


知識及び技能の基礎 思考力、判断力、表現力等の基礎 学びに向かう力、人間性等

噛み砕いていきます。

ひとつ目の知識及び技能の基礎は、豊かな体験を通じて、感じたり気づいたり、できるようになったりする力です。

ふたつ目の思考力、判断力、表現力等の基礎は、気づいたことを使って考えたり、試したり、工夫したりする力です。

みっつ目の学びに向かう力、人間性等は、よりよく生きようとする心や意欲、態度を表しています。

この3つの柱は、保育所だけのものではありません。

幼稚園も認定こども園も、そして小学校からその先も、共通して大切にしている生きる力の土台なんですね。




今日いちばんのキーワード|10の姿

そして、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿。通称10の姿です。

卒園するころ、小学校に入る前までに、こんな姿に育っているといいなという子どもの姿を、10個の項目で示したものです。


 ① 健康な心と体

 ② 自立心

 ③ 協同性

 ④ 道徳性・規範意識の芽生え

 ⑤ 社会生活との関わり

 ⑥ 思考力の芽生え

 ⑦ 自然との関わり・生命尊重

 ⑧ 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚

 ⑨ 言葉による伝え合い

 ⑩ 豊かな感性と表現


いちばん大事な注意点

この10の姿は、できたかできないかをチェックする到達目標ではありません。

だから「目標」ではなく「姿」という言葉が使われているんですね。

あくまで、こういう方向に育っていくといいね、という育ちの方向性を示す道しるべです。

ですから、すべての子が卒園までに全部できていなければいけない、というものでは決してありません。

少しミニ解説を入れますと、この10の姿は5領域をもとに、卒園時の具体的な姿として描き出したものです。小学校の先生とこの姿を共有することで、保育所から小学校への橋渡しにも使われています。




3階建ての構造になっています

ここまで出てきた言葉を、ひとつの絵につなげてみましょう。関係が分かると、すっとつながります。


何があるか

役割

3階

10の姿

卒園のころに現れてくる具体的な姿

2階

5領域

土台を育てるための具体的な物差し

1階

3つの柱(育みたい資質・能力)

すべての土台


いちばん土台にあるのが3つの柱です。この土台を育てるための具体的な物差しが、その上にある5領域。そして5領域を積み重ねていった結果、卒園のころに現れてくる具体的な姿が10の姿。

土台があって、具体策があって、目指す姿がある。 この3階建ての構造なんですね。

そしてこの3つの柱と10の姿は、保育所・幼稚園・認定こども園の3つで共通しています。

だから、どの施設で育っても同じ方向を目指せる。さらにその姿を小学校と共有することで、0歳から小学校へと、子どもの育ちがひとつにつながる。

これが平成29年の改定が目指した、大きな絵なんですね。




今日のまとめ

整理の物差しは年齢で変わります。乳児は3つの視点、1歳以上は5領域でしたね。

乳児の3つの視点は、健やかに伸び伸びと育つ、身近な人と気持ちが通じ合う、身近なものと関わり感性が育つ。

5領域は健康・人間関係・環境・言葉・表現。これは平成2年からの継続でした。

育みたい資質・能力が3つの柱。卒園時の姿が10の姿。

関係は、3つの柱が土台にあり、その上に5領域という具体策が乗っていて、それによって10の姿という目指す姿へ向かう。3階建てでした。

現行の指針の骨組みが、見えてきましたでしょうか。

年齢に応じた物差しで資質・能力の土台を育て、10の姿へと向かっていく。そしてそれを小学校へつなぐ。 これが今の指針の背骨です。




大きな構造から理解すると、ページが読めるようになります

ここからは、収録を終えたあとに考えていたことを書き添えます。

指針については、このように大きな構造から理解していくと、それぞれのページを開いたときに「ああ、こういう方向性で、こういう骨格の中でやっているんだな」というところが、大きく分かると思います。

このチャンネルでは指針の歴史を学んでおりますが、第1回はそもそも指針がなかった時代の話でした。1945年から65年まで、ここは指針がありませんでした。どんな時代背景があったからこの指針ができたのか。その時にはどんなものがあったのか。

そして1965年に指針ができてから1990年までは、改定が1度もありませんでした。90年に改定されて、そこからは約9年おきに改定がなされているわけですね。

こういった歴史をご説明しながら、今の現行の指針はどういうものなのかを解説させていただいております。




このシリーズのこれから

こちらは第10回で、現行の指針までがすべて終了します。

そこからは、今まさに指針がどのように検討されているのかに入っていきます。

来年には検討会が終わって、周知がされると思います。新しい指針についての検討会が今行われておりますので、全10回をこの中で解説していきます。皆さんに早い段階で、指針がどう変わっていくのかを知っていただく。

そして再来年には、皆さんが新しい指針をもうよく分かっていますという状態で保育がスタートできるように。 すずらんチャイルドケアとしては、そうしていきたいと思っています。

その解説動画をどんどん撮ってまいりますので、ぜひご視聴ください。

また今ちょうど、幼稚園教育要領や、認定こども園の教育・保育要領についても、歴史をさかのぼっていく動画を準備中です。こちらも準備ができ次第、配信させていただきます。




次回は、もうひとつの大きな柱です

次回は、現行の指針のもうひとつの大きな柱、子育て支援と職員の資質向上を見ていきます。

まだ 【第1回】 からご覧になっていない方は、指針がなかった時代のお話から順にご覧いただくと、流れがつながります。




セミナー・研修のご案内

すずらんチャイルドケアでは、保育士等キャリアアップ研修を行っております。7分野、約20コースを揃えており、39都道府県から指定をいただいております。東京都の指定コースにつきましては、東京都の補助金対象の方は受講料無料でご受講いただけます。

このほか、処遇改善等加算の6つの講座、こども性暴力防止法の対策セミナー、こども誰でも通園制度の参入判断セミナー、カスタマーハラスメントの対策セミナーの講師を務めております。

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