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こども性暴力防止法 新着資料解説【2026年9月・第5回】疑いが生じたときの国の手引き|園の初期対応、最初の1時間

11 時間前
読了時間: 13分

まずは解説動画をご覧ください(約21分)


▲ 起きてほしくないことです。でも、起きたときに園長先生と職員が最初の1時間で何をするかを、国の手引き4点から組み立てます。


※この記事は、こども家庭庁「こども性暴力防止法」の解説動画・資料のページで、2026年9月2日・9月18日に更新された資料に基づいています。


9月2日と9月18日、こども家庭庁の解説動画・資料のページで、事案が起きたときの対応に関する資料が4件まとめて更新されました。

起きてほしくないことです。でも、法律は、疑いがあると認めるときは調査を行うことを園に義務づけています。そして国は、その調査の中で、こどもにどう聞くか、保護者にどう伝えるかを、かなり具体的に書いています。中には、保育園を舞台にした聴き取りの例もあります。

この記事では、次の3つの問いに答えます。



問い

1

職員は、こどもに何を聞き、何を聞かないのか

2

園は、最初の1時間で何をするのか(分離・連絡・記録の順番)

3

保護者に、どう伝えるのか(被害を受けた疑いのあるこどもの保護者と、それ以外の保護者では違う)


この3つが頭に入っていれば、いざというとき、園は「まず何をするか」で迷わずに済みます。




9月に更新された4つの資料



資料

更新日

対象

1

こどもへの聴き取りに関する留意点(知識編)

9月18日

事業者向け。聴き取りの前提と、「司法面接」という手法から園が学ぶことをまとめたもの

2

こどもへの聴き取りに関する留意点(実践編)

9月2日

ケースが2つあり、ケースAが未就学児、しかも保育園の事例

3

性暴力を受けたこどもへの対応のポイント

9月18日

弁護士・心理職・事業者向け

4

被害を受けた疑いのあるこども以外の保護者との対話

9月18日

弁護士・心理職・事業者向け


3つ目と4つ目は専門家向けの色が濃い資料です。ただ、園が専門家に何を頼めるかを知るために、園長先生が概要を押さえておく価値はあります。

なお、国のページには、何がどう変わったかの新旧対照表がありません。この記事は、9月時点の内容としてお伝えします。




前提|国が挙げる6つの重要項目

「対応のポイント」の26ページに、国が重要項目として挙げている6つがあります。



重要項目

1

性暴力はいつでもどこでも生じ得るとの意識・理解をもつこと

2

疑い段階から重く受け止めた対応を行うこと

3

速やかに警察に通報又は相談をすること

4

チームによる対応を行うこと

5

こどもの心身の安全を第一とすること

6

性暴力を受けたこどもに対しては、トラウマインフォームドな対応が基本


「トラウマインフォームド」とは、この子にはトラウマ反応が出ているかもしれない、という前提で関わることです。たとえば、話が飛ぶ、急に黙る、笑ってしまう。それを「嘘をついている」と受け取らずに、傷ついた反応として受け止める姿勢です。

園長先生に確認していただきたいのは、3つ目です。速やかに警察に通報または相談する。 園の中で事実を固めてから、ではありません。疑いの段階で相談するということです。ここは、これまでの園の感覚とおそらく違うところかもしれません。




問1 職員は、こどもに何を聞き、何を聞かないのか

知識編のまとめ(34ページ)で、国が「司法面接」という手法から事業者が学ぶべきポイントとして挙げているのは、たった2つです。



ポイント

1

最小限の聴き取り。「誰が」「どうした」(疑い)で十分

2

通告・通報


園での応急手当と同じです。切り傷を見つけたら、園がやるのは止血と消毒まで。縫うかどうかは病院が判断します。園が傷口を広げて確かめようとしてはいけません。

聴き取りも同じです。園は「誰が、どうした」までを聞きます。 何回、どのくらい、どんなふうに、は聞きません。詳しく聞くほどこどもの記憶が変わってしまい、あとの調査で使えなくなるからです。国はこれを「記憶の汚染」と呼んでいます。

あわせて挙げられている留意点です。


聴き取りの留意点

疑いを持った態度で聞かない

感情的にならない

無理に聞きすぎない

誘導しない

指導やカウンセリングをその場でしない

開示をほめすぎない

できない約束をしない

繰り返し聞かない


「ほめすぎない」は意外に思われるかもしれません。「よく話してくれたね、えらいね」と持ち上げすぎると、こどもが大人の期待に合わせて話を足してしまうことがあるからです。感謝は伝えます。ただ、評価はしない。この一線が大事です。


実物で見る|実践編のケースA(保育園)

保育園で、園児のAちゃんから打ち明けられた場面です。実践編4ページのやりとりを、そのまま引用します。


(こども)「ねえ先生、お話聴いて。」 (あなた)「Aちゃん、どうしたの?」 (こども)「変なことしてきた。」 (あなた)「うん、誰が?」 (こども)「B先生。」 (あなた)「そうか。Aちゃんが安心してお話しできるように、静かなところで聴かせてもらうね。あっちのお部屋でいいかな?」

「誰が?」と聞いたところで、もう「誰が」「どうした」はそろっています。ここで詳しく聞かずに、聞く場所を移しています。

ここまでで、国が示しているポイントは3つです。



ポイント

1

静かな落ち着いた場所に移る。そのとき「静かなところで」と移動の理由を言う

2

殺風景で萎縮する場所は避ける

3

録音・録画は「きちんと覚えておけるように」と理由を伝えて、できるだけ行う。ただし、こどもが話しにくくなるならしない


保育の現場でいえば、事務室の隅より、いつも使っている絵本コーナーや空いている保育室のほうが向いている、ということです。

続いて、聴き取りの本体です(実践編5ページ)。まず「話しに来てくれてありがとう。」と感謝から入ります。次に「『変なことしてきた』って、何があった?」と聞きます。

ここがポイントです。こどもが使った言葉を、言い換えずにそのまま使います。「触られたの?」と、大人の言葉に置き換えません。

そして、オープン質問です。国は4つ挙げています。


オープン質問

例

誘いかけ

何があったか、最初から最後まで、全部話してください

時間の分割

その前は? その間は?

手がかりの質問

さっき言っていた○○のこと、もっと教えて

それから質問

それで? それからどうなった?


反対に、「はい・いいえ」で答える質問や、「AかBか」を選ばせる質問は、暗示や誘導になりやすいので使ってはいけません。

このやりとりの中で、Aちゃんが「パジャマの中に手が入ってた」と言った時点で、国はこう書いています。体への不必要な接触があったと分かれば、それ以上は聞かない。施設長に報告する。

もう1つ。本人が「怖かった」と言っていないのに「怖かったね」と言わないことです。聞き手の言葉で評価をしない。保育士は共感の言葉が自然に出る職業ですから、ここは意識して押さえるところです。


「誰にも言わないで」と言われたら

ケースAの終わり(実践編7ページ)には、Aちゃんが「このことは誰にも言わないでね」と言う場面があります。「わかった、誰にも言わないよ」と答えてしまいがちですが、答えてはいけません。立場上できない約束はしない、ということです。

国の例では、こう聞き返しています。


誰かに言うと、どんなことが心配かな?

「どうして?」と聞くと、責めているように聞こえます。だから「どんなことが心配?」と尋ねる。この一言の違いが、資料に書かれています。

そして、園長先生やおうちの人とも一緒に考える、と情報を共有する範囲を伝えます。最後に、Aちゃんが怒られることは何もないと伝えて安心させ、こどもが友達や保護者のところに戻るまで、安全を見届けます。


記録と報告|園長は「詳しく聞いてきて」と言わない


すること

中身

記録

聴き取りの経緯、日時、場所、聴いた人、記録した人。発言は、こどもが使った言葉のまま残す

報告

速やかに管理者に報告する


ここで、園長先生に1つ。国は「管理者は詳細な確認を求めない」と書いています(知識編35ページ)。報告を受けた園長が「もっと詳しく聞いてきて」と言ってはいけない、ということです。聞くのは1回、1人。 ここは、園長先生が自分を縛るルールだと思ってください。


問2 園は、最初の1時間で何をするのか

「対応のポイント」の初期対応の項目から、順番に3つです。


順番

すること

中身

1

分離

こどもと、加害が疑われる職員との接触を遮断する。加害が疑われる職員をその環境から遠ざけ、こどもが安心できる大人が対応する状況を確保する

2

被害を受けたこどもの保護者への速やかな連絡

動揺に共感し、事実のみを伝え、こどもを責めたり疑ったりしないよう伝える

3

情報と証拠の保全

証拠に接する人を限定し、誰がいつ管理・閲覧したかを記録する。防犯カメラの映像があれば、上書きされる前に確保する

そして、これらと並行して、警察と所管行政庁への通報・相談があります。


分離は「暫定」です

分離は、ガイドラインでいう「一時的な接触回避策」として、防止措置に位置づけられています。

Q&A基礎編7-6には、こうあります。


事業者は、被害が疑われるこどもと加害が疑われる従事者との接触を回避するため、その従事者を一時的に対象業務から外し、自宅待機や別業務に従事させるなどの措置を講じることが必要です。 なお、これは必要な事実確認ができるまでの暫定的な対応であり、事実確認が未了であるにもかかわらず、加害事実があることを前提とした懲戒等の処分や、確定的な配置転換等の労働者の地位に変更を生じさせるような対応をとることはできません。

ここで注意です。自宅待機や別の業務につけるのは、必要な事実確認ができるまでの暫定的な対応です。事実確認が終わっていない段階で、加害があったことを前提に懲戒したり、確定的な配置転換をしたりすることはできません。Q&Aは続けて「重要な点として」と、同じことを重ねて書いています。園長先生が感情で先走らないための歯止めです。


保護者への最初の連絡

被害を受けた疑いのあるこどもの保護者には、「お子さんが嘘をついているとは思っていません」ということを、園から先に伝えます。


順番は、園の報告・対応ルールに書いておく

この順番は、園の報告・対応ルールに書いておきます。第4回でお伝えしたとおり、認可保育所は国の対処規程(別紙1)そのものは作らなくてよいのですが、ひな型の第3条以降には、この流れの型が入っています。園の報告・対応ルールを作るときの参考になります。




問3 保護者に、どう伝えるのか

ここで大事なのは、保護者が2種類いるということです。


保護者

基本の姿勢

被害を受けた疑いのあるこどもの保護者

意向を最優先にする

それ以外の保護者

5つの心がけで対話する(下記)


4つ目の資料の25ページのまとめで、それ以外の保護者との対話について、国は5つの心がけを挙げています。


心がけ

誠実性

適時性

透明性

一貫性

再発防止


透明性のところには、「放置や隠蔽はあってはならない。判明している事実は隠さず、不明な点は確認中と正直に伝える」とあります。

園でいちばん効果があるのは、一貫性のところです。情報発信と問い合わせ対応のルートを一本化する。複数の対応者で分担すると、違う情報を伝えてしまうからです。つまり、保護者からの電話は、すべて園長か、あらかじめ決めた1人が受けます。担任が個別に答えることはしません。


保護者会は、開かない選択肢もある

保護者会を開くかどうかは、被害を受けた疑いのあるこどもとその保護者の意向を尊重して決めます。「知られたくない」という意向があれば、開かない選択肢もあります。その代わりに、個々の保護者に報告・説明する方法もあります。

うわさは二次被害

最後に、うわさです。国は、うわさが生じること自体が二次被害だと書いています。だから、職員に対しても「ほかの職員や保護者に話さない」ということを、最初に徹底します。




園がやること、専門家に頼むこと

4つの資料には、弁護士と心理職の役割が、かなりの分量で書かれています。園がやることと、専門家に頼むことの線引きは、こうです。



中身

園がやること(最初の1時間)

最小限の聴き取り、分離、保護者への第一報、証拠の保全、警察・行政への相談

弁護士に頼むこと

対応方針、保護者説明の構成、被害の範囲の見立て、二次被害の防止

心理職に頼むこと

こどもと保護者の心のケア、関係者への助言、専門機関へのつなぎ


国は、早期に弁護士や心理職に相談し、助言を得て対応することは重要だと書いています。

つまり、園長先生が今のうちに決めておくことは1つです。誰に電話するかです。顧問弁護士がいる法人は、その連絡先を。いない園は、自治体の相談窓口や、都道府県の性暴力被害者支援センターの連絡先を、事前に控えておいてください。事案が起きてから探すのでは間に合いません。




今日やることは1つ|「初動の一枚」をつくる

上の段に園の中の分担、下の段に園の外の連絡先を書いた1枚です。


園の中の分担

役割

担当

聴き取り

原則1人

記録

記録係

保護者への第一報

原則、園長

問い合わせの窓口

1人に一本化

分離の判断

園長


園の外の連絡先

連絡先

警察

所管行政庁(市町村・都道府県の担当課)

顧問弁護士、または相談先の弁護士

心理職、または性暴力被害者支援センター

法人の本部


この1枚が、園の報告・対応ルールの土台になります。先にこの1枚を作っておくと、ルールを文章にするときも早く終わります。

「こんな1枚を作ると、職員が不安になるのでは」という声を聞くことがありますが、私は逆だと思います。避難経路図が壁に貼ってあるから、火事のときに動けるのです。この1枚も同じで、あるから動けるのです。




今日の要点

問い

要点

職員は何を聞くか

「誰が、どうした」まで。こどもの言葉をそのまま使い、オープン質問で。評価はせず、できない約束もしない。聞くのは1回。記録は発言どおりに残して速やかに報告。管理者は詳細な確認を求めない

園の最初の1時間

分離、保護者への第一報、証拠の保全。分離は事実確認ができるまでの暫定的な対応で、懲戒や確定的な配置転換はしない。警察と所管行政庁には疑いの段階で相談

保護者への伝え方

被害を受けた疑いのあるこどもの保護者の意向を最優先に。それ以外の保護者には誠実性・適時性・透明性・一貫性・再発防止。窓口は一本化。うわさは二次被害

専門家

頼むことを決め、誰に電話するかを今日のうちに控えておく

今日やること

初動の一枚(園の中の分担と、園の外の連絡先)




9月資料の各論が、これでそろいました

これで、9月の資料の各論5本がそろいました。ダイジェスト記事とあわせて、9月に国から出た資料が、園の10個の作業のどこに当たるのか、全部つながった形になります。目次代わりにお使いください。

各自治体の保育士会などで、このお話が参考になりそうでしたら、動画や記事をぜひ共有していただければ幸いです。

出典は、すべてこども家庭庁の資料です。動画の概要欄に、ページ番号つきで載せています。

  • こども家庭庁「こども性暴力防止法」ページ https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou

  • こどもへの聴き取りに関する留意点(知識編、2026年9月18日更新)P28・P34〜35

  • こどもへの聴き取りに関する留意点(実践編、2026年9月2日更新)P4〜7

  • 性暴力を受けたこどもへの対応のポイント(2026年9月18日更新)P26ほか

  • 被害を受けた疑いのあるこども以外の保護者との対話(2026年9月18日更新)P25

  • こども性暴力防止法に関するQ&A(2026年9月29日更新)基礎編7-6




職員一人ひとりの練習と、園の段取りづくりは、こちらで

この記事でお伝えしたのは、国の手引きが園の初動として何を求めているかまでです。




◆従事者研修(保育特化版)◆

職員一人ひとりが「自分が最初に打ち明けられた人になったら」を練習する研修です。オンデマンドの座学6本と演習を組み合わせて、今日のケースAのような場面を、保育の4つの場面で練習します。


演習の場面

こどもから打ち明けられたとき

保護者から相談を受けたとき

同僚から相談を受けたとき

言葉で確かめられない0歳児のとき


園内研修では、場面1と場面3を実際に声に出してやってみます。「誰が、どうした」で止める練習は、頭で分かっていても、声に出すと難しいものです。だから、声に出す回を作っています。

常勤の先生は園内研修1回、非常勤の先生はオンデマンドだけで修了できます。料金は園ごとの職員数による区分制で、10名までの園は税別40,000円からです。





◆こども性暴力防止法 実務対応セミナー◆

園長・主任の先生方向けの、Zoomで3時間のセミナーです。今日の「初動の一枚」と報告・対応ルールを、対応準備シートに書き込みながら進めます。


日程

時間

2026年 10月 14日(水)

14:10〜17:00

2026年 11月 13日(金)

13:10〜16:00

2026年 12月 3日(木)

13:10〜16:00

アーカイブ視聴もお申込みいただけます。お申込みのあと、すぐに受講を始められます。





お問い合わせ


特定非営利活動法人 すずらんチャイルドケア

人財育成部 部長 太田 宏彰


〒250-0862 神奈川県小田原市成田475-17 ゼフィールU201

TEL 0465-87-7649




ご質問はホームページのお問い合わせフォーム、または動画のコメント欄からもお受けしています。


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